「私たちは今でも進化しているのか?」マーリーン・ズック

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★★★ 文藝春秋
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世の中には「パレオダイエット」なるものがあるそうです。知りませんでしたが「Paleo」は「原始的な」です。「Paleolithic Era」で旧石器時代。要するに旧石器時代の人間のような生活をすることで健康になれる。Caveman Diet(穴居人ダイエット)。

根拠としては、文化の急激な変化にたいして、人間の体は対応することができていない。特に農耕文化に突入してからの小麦や米、糖質の過剰カロリーに人類のDNAは対処できない。だから肥満したり、不健康になったり精神を病む。

それなりに説得力がありますが、この「パレオダイエット」にも穏健・過激いろいろあって、たとえば牛乳を許すかどうか、果物はどうだ。バターやタマゴをどうする。極端な提唱者になると、マラソンは禁止。原始人はそんなに長距離走り続けることはなかったから。もし走るなら、数百メートル全力疾走して、プラプラ歩く。また急に走る。休む。獲物を見つけた狩猟民のパターンですね。

また「殺したマンモスの肉片を想定して、数十キロの重いものを持ち上げるトレーニングもいい。しっかり食ったら寝る。常食はもちろん肉です。あとは野草や根菜とかナッツ類とか。

つい笑ってしまいそうですが、提唱者は原始人が槍もって走りまわっていつもマンモスや鹿を狩っていたと想像しているらしいです。ずいぶん単純化している。トボトボ歩いて腐肉をあさったり、虫ををつかまえて食っていたとは考えない。

で、そうしたパレオ主義者に対してずいぶんお怒りの様子なのがこの本の著者。本当に人類は変化してこなかったのか。いやいや、生物はけっこう短期間で進化するものなんだ。ま、そういう趣旨です。

実例としてあがったハワイの雄コオロギは、ほんの5年くらいで進化(変化)した。メスの気をひくためにせっせと鳴く行動を停止した群れがいて、なぜならこの地域では鳴くと恐いハエに発見されてタマゴを産みつけられてしまう。鳴かないという選択は求愛行動として非常に不利になりますが、それでも生き延びるためには鳴かない道を選んだ。

そうそう。一部の人種の瞳が青いのも、ほんの数千年の進化らしいです。昔はみんな色が濃かった。人間の進化が止まったと考えるのは、まったくの勘違いなんだそうですね。

なかなか面白い本でした。