「北海道探検記」本多勝一

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★★★ 朝日新聞社

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本多がまだ若くて北海道支社にいた3年ほど、絶好の機会だってんで道内の秘境僻地を探検しまくった頃のもの。昭和60年頃かな。あまり面倒なことを言わず、とにかく未踏峰があったら登る、調査隊がいれば参加する。完璧な山男です。あまり理屈がないので読みやすい。

たとえば知床。当然のことながら、当時は完全な秘境です。船に乗って半島をまわったり山を登ったり、番小屋に泊めてもらったり、名前のない湖を発見したり、這い松の中を漕いで虻と蚊に襲われたり。なんとまあ物好きな。

あとは無人島へ渡ったり、つぶれそうな開拓村に泊まったり、漁師と話をしたり。漁師も開拓民もみーんなべらぼうに貧しいです。こんなのでどうして生きていけるというほど貧しい。そう、北海道は貧しかった。今だって、たぶん貧しい。現在も沖縄北海道担当大臣なんてのがいるほどで、昔は北海道沖縄開発庁というのがあったはず。今でもあるのかな。要するに土壌は火山灰とか泥炭かなんかで力がないし、冬は信じられないほど冷えるし、行政の方針はコロコロ変わって展望がないし、嘘ばっかりだし。暮らしやすい場所じゃないです。

渡辺一史の「北の無人駅から」がこうした実情を伝える好著でした。そうそう。テレビドラマ「北の国から」はずいぶん観光客を増やしたみたいですが、あのドラマは美しい自然に感動するのではなく、実は農民たちの厳しい暮らしぶりや人間関係のほうに本当のテーマがあったんじゃないか。そんな気がします。当然じゃないか、と言われそうだな。

ま、要するに北海道は貧しい。僻地はもっと貧しい。書かれているエピソード、日高の奥地の分校の子供が静内(子供たちからすると憧れの都会)を見たいばっかりに小指にケガをする。ケガすると医者がいないので静内へ連れていかれる。自分で指を切ったってのは村では「公然の秘密」だったそうです。ま、仕方なかんべ。その集落はその後、全員移転して消えたそうです。

本多勝一ってのは、あまり情緒的に流されないのが魅力です。貧しさを坦々と書く。農民漁民たちがみんな「いい人間」ということもない。ずるい奴もいるし、こすっからいのもいる。ま、当然ですわな。有名記者になってからはちょっと「自分の主張」が強くなりましたが、若いころはまだそれが少ない。いい本でした。