「6度目の大絶滅」エリザベス・コルバート

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★★★ NHK出版
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過去、地球上には5回の大絶滅があったんだそうです。寡聞にしてカンブリアの頃の断絶と、例の恐竜大絶滅程度しか知りませんでした。原因はいろいろで、天体の衝突だけではなく、海の酸化とか大規模な寒冷化とか、それぞれ別個の理由が考えられているそうです。

で、読み進むうちに最新の種の大絶滅傾向はどうも人間が原因ではないか。化石燃料も大きな理由ですが、実はもっと早期、要するに人類がはびこりだしてから一気に周囲が大変化した。いわば現在は「人新世」とでもいうべき時期にある。

たとえばベーリング陸橋を通って新大陸へ移動した人間たち。喜んでわっさわっさとマンモスを殺した・・・というイメージとは少し違うんだそうです。試算によると、10人くらいが年に1頭のマンモスを殺すだけでもやがてマンモスは死に絶える。マンモス狩りは大変なんで、時々頑張って殺す。いわばボーナス食料です。たぶん普段はもっと狩りやすいシカとかトナカイとかを殺していた。

年に1頭レベルでなぜ絶滅したのか。こういう大きな動物は「自分が狩られる」というリスクを計算しないで進化してきたからです。「周囲を狩る・食べる」「自分は狩られない」という前提で出産数や子育て時間を決めているんで、ちょっとした要因で 計算が違ってしまう。マンモスだけでなくスマトラサイとかライオン、トラなんかも同じ。人類が増えてきたため、もう未来がなくなった。

直接殺すだけでなく、交通機関の発達でいまや世界中の生物は縦横に運搬され続け、かきまわされる。外来種の氾濫。かつてのパンゲア大陸の分裂で多様な生物が生まれた歴史をちょうど逆まわし。急速に世界中の大陸が一箇所にまとまり、多様性がなくなり、どんどん平均化する。種の数が激減する。生物的な新パンゲア大陸の実現

もちろんいつの時代にもこうした変化はありました。生物はなんとかそれに適応して生存してきた。ただ問題になるのは「変化の時間」で、ゆっくりならいいんですが、進化的な対応策をこうじる余裕がないほど迅速に殺されると、もうどうしようもない

6度目の大絶滅は現在進行中のようです。たぶん、原因となった人類も同時に滅びるんでしょうね。その後に登場するのは「ジャイアントラット」かもしれない。(ネズミはやたらはびこっている)

読みやすく、明快な啓蒙本です。ちょっとした拾い物でした。