「新訳 武士の娘」杉本鉞子

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★★ PHP研究所
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書名は知っていましたが、実際に読むのは初めて。維新後、長岡藩の家老の娘が、結婚を機に米国へ渡り、受洗し、子供を産んで育てる。亭主が死んでいったんは帰国するものの、いろいろあってまた再渡米。おそらく友人に勧められて本を書く。ベストセラーになったそうです。

なるほど。きれいな文章で故国のこと、父のこと、文明開化のこと、米国文化と日本文化の衝突や比較などなど。米国人が喜んだ理由は理解できますが、要するにエキゾチズムを満足させただけでしょうね。内容はさして深みもなく、あまり感心しませんでした。

いかにも欧米人が想像する「東洋の心」「不思議な日本」「サムライ」「切腹」が満載です。喜ばれそうなことばっかり書いている。違いはありますが例の「王様と私」的な覗き見趣味の視点。

詳細は知りませんが、友人のアドバイスや添削もあった様子です。売るためにちょっと迎合、あるいは遠慮した印象。

読んで損はしませんでしたが、ま、そういう本でした。ちなみに「悪意の人」はまったく登場しません。みんな善人で理解にあふれて優しい。