「みかづき」森 絵都

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集英社★★★
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数年前、NHKの連続ドラマでやっていましたね。たしか高橋一生と永作博美。その原作になるらしい。

ま、ようするに進駐軍による劇的な教育大逆転から現代にかけて。自民の勘違いセンセイ連中、アタマが固くて定見のない文科省(文部省)、役にたたない教育委員会、欲まるだしの財界、ひたすら抵抗し続ける無力な日教組。

そうしたフラフラしつづける教育界・学校に対して、それを補完しながら、かつ利益を得ようとするのが補習塾・進学塾。あまり語られることのなかった、そうした「学習塾」の中の人の熱と欲を描いたのがこの小説です。

戦後まもなく。ようやく秩序が戻りかけてきた頃に、学歴はないけど妙に教えるのが上手な若い用務員がいた。当時の呼称なら「小使い」かな。ふとしたキッカケで、落ちこぼれの子供たちがその用務員室に出入りするようになり、するとなぜか勉強がわかるようになる。お母さん方の評判になる。()

そんな噂を聞きつけた猛烈タイプ、超意志のシングルマザーが男を強引につかまえる。からめ捕っただけでは足らず、結婚までさせる。使える男を一生の伴侶にしようという魂胆ですね。つかまったのが一生。

そんな具合に、異能があってのんきな男と、「文部省は敵!」をモットーに塾経営に燃える強い女。その家族、一族の歴史の物語です。孫の代まで続く。長い長い小説

ちょっと一本調子で飽きる要素もありますが、ま、悪くない一冊でした。当方、中学は確か1クラス55人くらいはいたかな。旧兵営転用のボロ校舎で、隣の教室との境板には穴があいていた(破られていた)。わざわざその穴に手をつっこんで振ってみせるバカがいたり。漱石じゃないけど、中学生ってのは人間と思わないほうがいい。あれは人類ではなく「中学生」という生き物です

お母さん方の中には若い用務員と親密な関係になる人もいる。それを探り当ててスーパー・シングルマザーは学校に密告書。クビになって途方にくれている男をひっぱりこむという作戦。あざとい。賢い。