「天皇と日本人」ケネス・ルオフ

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朝日新聞出版★★
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副題は「ハーバード大学講義でみる『平成』と改元」。著者は日本研究がテーマだそうで、現在はオレゴンだったかコロラドだったか、そのへんの大学に在籍。

で、日本の皇室とか昭和天皇、平成天皇あたりに興味をもって調べてきた。右派vs左派ガチャガチャしている敏感なテーマですが、本人はあくまで外国人、不偏不党、客観。本音としては「中道左派」あたりの位置なんだけど、だからといって日本の左派・進歩派に共感とは限らない。この連中と話をしても予想のつくことばっかりで驚きがない。つまらないんだそうです。

逆説的ですが、右派・保守・ウルトラライトってのは、あんがい進め方が民主的なんじゃないか。ゴリゴリの牙城とされる神社本庁なんかも、意外に粘り強く(いわば民主的に)一歩一歩手続きして意志を政治に反映させている。

全般、書かれていることは、ま、常識的です。多くの日本人が思っているのと同じ。このままの皇室ではどうにもならないのに、政権(特に安倍政権)は何もしないでズルズルひき延ばしている

そうそう。戦後すぐ、天皇責任論を主張して吉田茂を責めた若い政治家がいて、なんと中曽根康弘。保守合同の前です。その中曽根が総理になってバリバリの保守と見られるようになるとは、不思議なものです。政治ってのはそんなものなんでしょうね。(ずいぶん前、中曽根自身が語った「外交史」を読んだことあり。それなりに面白かったけど、もちろん都合の悪い部分はオールカットでした)

もうひとつ。へぇーと思ったのは、昭和天皇が頻繁に政治レクチャーを受けていたこと。けっこう質問することも多かったそうで、侍従なんかにはいろいろ文句も言っていた。たぶん本人は(表面に出る行動は控えていたけど)自分を本心から「象徴」とは見なしていなかったらしい。形の上では半生ずーっと元首だったんですから、そう急に変われない。当然ですね。

それに反して明仁上皇は、自らを「象徴」として律してきた。不満だけど従って・・ではなく、行動規範として「象徴」であり続ける。少年のころからそう生きてきたんでしょう。

で、元天皇はどうなのか。それはまだ不明です。

思い出した。もうひとつ新知識。北欧あたりの王室、あれは「自転車王室」なんだそうです。王様が自転車にのって、そのへんのカフェに入ってお茶をのむ。そういう王室のありかたですね。なるほど。