「反穀物の人類史」ジェームズ・C・スコット

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みすず書房★★★

hankokumotu.jpg面白い本だったのに、なかなか読めない。なんでだろ。翻訳もそんなには悪くはないのに、なぜか頭にすんなり入ってこない印象。こういう場合、相性という言葉を使って誤魔化すしかないか。

えーと、要するに農業の開始と国家形成についての疑問提起です、たぶん。ちょっと前から


「脱・狩猟採集」→「農業の開始」→「定住」→「国家の形成」 = 文明!


という図式には疑問が投げかけられていました。

狩猟採集はそんなに効率が悪かったんだろうか()。小麦や大麦、米なんかの栽培はほんとうに文明(幸せ)の始まりだったんだろうか。こうした農耕の始まりから、大がかりな灌漑などの必要性が生まれ、自然に国家が誕生したんだろうか。

どうも違うらしい、というのが最近の学説というか、常識です。大がかりな定住農業の始まりと同時に出生数は増えたが、なぜか忙しくなり、人類の体格は貧弱になった。家畜と暮らすようになって疫病も流行した。国家の誕生は奴隷の誕生でもあった。どこが幸せだったんだろ。

そんなに厚くない本の、まだ半分しか読んでないので断定はできませんが、どうも人類は喜びとともに定住農耕を開始してはいなかったらしい。狩猟採集の暮らしは食べ物も(おおむねは)豊かだったし、余暇も多かった。だから農業が開始されたからといって、みんなが諸手をあげて大歓迎したわけではない。

少なくとも数千年、狩猟をやめて畑をつくってみたり、麦をつくるのを止めてまた猟を始めたり、そういう移行期、あるいは逆行期が非常に長かった。簡単にいうと、農業はあんまり人気がなかったんじゃないか()。

たぶんですが、この本の趣旨は「国家が定住農業を強いた」ということなのかな。きままに作物を育てて暮らしてんじゃ意味がないし、都合がわるい。国家が管理して帳簿をつけて、税として徴収できるような作物が必須だった。収穫時期が一定で短いこと。倉庫に保管できること。管理できること。つまりは何種類かの穀物。また人々が密集し、定住していること。人間が動物を家畜化したように、国家が人間を家畜化する。言葉を変えると「穀物栽培」という環境が人類を家畜化した。

ちなみに「家畜化」とは、かならずしも迫害じゃないです。ある意味、手厚い保護ですね。だから犬、猫、羊、豚。みーんなものすごく繁栄している()。そりゃ豚なんか最終的には食べられるかもしれないけど、種として大成功、とも言えるわけです。人類も「家畜化」して、その結果として地球上に大繁栄している()。

従来の常識では、ユーフラテス中流あたりの乾燥地で文明が育ったことになってますが、これもなんか変で、もっと農耕に適した地域があったんじゃないだろうか。著者によるとユーフラテス川の下流地域。昔は海がせまって広大な湿地帯だったらしい。パラパラっと種をまくとすぐ収穫できる。もし育てにくくなったら、フラっと移住する。どこだってたいして変わらないし、なんなら狩猟に切り替えたっていい。

管理する側はそれじゃ困るわけです。だから国家が成立したのはそうした農業適地ではなくて、上流の乾燥地。つまり人類が自然に国家をつくったのではなく、国家が都合のいい場所に人々を集めて畑をつくり、集中労働させ、強制する。税金を集める。それが国家というもの。奴隷化、

なんか感想がまとまってませんが、大筋、たぶんそんなストーリーのようで、だから本の副題も「国家誕生のディープヒストリー」。読んでる途中で期限がきたので返却になってしまった。あらら。

 

三内丸山の遺跡なんかの例。かなり成功していたし、計画性もあり集団化もしていたらしい。それでもまだ「採集生活」です。

それなのになぜ、人気のない集団生活、農業国家を人間は選択してしまったのか。そのへんは必ずしも明確じゃないみたいです。いろんな説はあるようですが。

ネズミとかカラス、ゴギブリ。これも広い意味で家畜です。適応して、いわば共生。けっして歓迎はされてないけど、仲間。農業と定住の産物です。ちなみに動物は家畜化することで形態が変わります。牙が小さくなったり小柄になったり愛想がよくなったり。

実は人間も「家畜化」で変形しているはずだけど,まだ本格的に農業始めてから160世代だったか240世代だった。ちょっと立証するには短かすぎるらしい。