「複眼人」呉明益

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fukuganjin.jpgKADOKAWA★★★

「こんな小説は読んだことがない。かつて一度も」とアーシュラ・K・ル=グィンが言ったそうです。その言葉をそのままキャッチコピーにしているけど、ま、確かに。

台湾の作家です。中国の作家で台湾に逃げて書いてる人なら知っていますが、根っからの台湾は初めてかな。いや、誰かいたような・・・と記憶をたどると、たぶん「鬼殺し」という小説。莫言が褒めたというから、たぶんそれでしょう。でも最後まで読めなかった気がします。えーと、作者は甘耀明という人でした。

で、別人作家である呉明益の「複眼人」。たしかに面白いことは面白い。ファンタジーみたいでもあるし、太平洋を漂う巨大なゴミの島、台湾東部を襲う大雨、高波。環境問題でもある。また山岳地帯の少数民族の話でもある。

で、別件。孤島に次男として生まれた美少年は島に住み続けることはできない(たぶん人口制限が理由)ので、ある年齢になると舟を作って、水と食料もって沖へ乗り出す。置いていかれた島いちばんの美女、お腹に子を宿していて、少年の後を追って海へ出る。これらの美少年、美少女、わたしたちの基準でも美男美女かどうかはかなり怪しいです。

で、台湾ではオトコとコドモをなくして、ちょっとピリヒリして猫と暮らしている中年女性の大学教授。それに唄がうまくてコーヒー店をやってる先住民のオバハン。海に浸食されて湖みたいになった住宅で暮らしていて、はてこれからどうなる・・・。というあたり。

淡々としていて不可解なストーリーで、しかしけっこう魅力がある。でも、まだようやく半分程度で、迫った返却日までにはたぶん読みきれないですね。最近、こんなんばっかり。