「新選組遺聞」子母澤寛

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shinsengumiibun.jpg中公文庫★★★

前作にあたる「新選組始末記」のほうが有名かな。これもたぶん読んでるとは思うけど、細かい部分なんかまったく忘れてる。ん? 「まったく」の後に肯定語が付くのは変か。ま、いいや。

原田左之助とか永倉新八とか、芹沢鴨とか、沖田総司とか。おなじみ隊士について、たぶん昭和の初めごろですかね、まだ生きていた古老からの聞き書きが多いので、なんというか実感がせまります。

聞き書きだからすべて真実とは言い切れない。言い切れないけど、ま、いいじゃないですか・・とも言いたくなります。たとえば下帯もつけずに殺された芹沢、暗いところで逃げまどって、最後は八木家の寝所にとびこんだとか。そこへ隊士連中が追いかけて切りまくるもんだから、寝ていた八木の子供まで足に怪我をした。

巻き添えくったお梅の死にざまは無残だったとか。実は他にも隊士のところに来ていた女たちが何人かいたとか。あんまり書かれないような詳細が多いです(馴染み隊士の帰りを待って、勝手に子供たちの部屋で寝ていた)。そんなことを八木の跡取りだった子供が記憶をたどって話をする。

そうそう。子母澤さんは圧倒的に近藤勇の側に立ちます。近藤斬首のシーンだって、土佐の谷干城が悪者になるし、もっとひどいのは近藤憎しの小者あつかいにされた香川敬三という人。「香川なんてのは東山道軍総督府のしょせんは旗持ち程度」と有馬藤太の証言でこきおろされてます。でもWikiによると本当に総督府の大軍監だったらしい()。

なにが本当か。真実か。わからないことが多いです。

そうそう。近藤が流山で降伏の際に名乗った「大久保大和」ですが、官軍側には当初から近藤だと気がつかれていたようです。そもそも「大久保大和」は誤魔化しなんかじゃなく本名だともいうし、このへんも難しい。そうそう、随所に当時の手紙が掲載されています。面白いけど、読むのが大変です。

 

香川敬三。後に伯爵。戦は下手だったけど一応は出世した。日露戦争前夜、皇后の夢枕に坂本龍馬があらわれ・・・は香川の言い出した話とも