「黒い家」貴志祐介

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kuroiie.jpg角川ホラー文庫 ★★

貴志祐介がまだ若い頃の作品。危惧されながら新設された日本ホラー大賞の4回め受賞。1997年です。へーっと歴代を調べてみたら、1回めの佳作には坂東眞砂子。2回めの大賞が瀬名秀明。で、3回めの佳作も貴志祐介だった。この賞を契機に日本のホラー小説がどうとか・・・と解説がありました。なるほど。

京都の保険会社の若い社員がふとしたことから保険金殺人らしい凶悪な構図にまきこまれる。保険金を狙うもろもろの詐欺やら悪徳連中の暗躍話が面白いなあと思ったら、貴志祐介、実際に生保に在職していたらしい。なるほど、リアル。

で。中身はたしかにホラーです。奇怪な大量殺人。たえがたい臭気と血糊。青年は子供のころの記憶からどうしても恋人とセックスができない。その恋人、ちょっと人間離れした天使なんですが、狭いアパートのベッドの若いふたり、貴志の短い描写だと妙に色っぽい。グダグダ書く必要はないんですね。

貴志祐介、きっと巧い書き手なんだと思います。そういえば「悪の教典 」でも主人公(サイコキラー)によってメロメロにされる女子生徒の描写あたり、あれもなかなか良くて色っぽい。記憶にのこるものでした。不思議ですね。

ただしこの人、往々にして終盤が駆け足で書きなぐったなの感を残すことあり。わずかに惜しいなあ。(よく言えば疾風怒濤)

それは別として、最後の最後、新たな人物の登場は「?」。必要あったのかな。なんとかシジミの幼虫のくだりも?。