子供のころに「百合若大臣」の話を聞かせてくれたのは、たぶん年の離れた兄だったと思います。いろいろ艱難辛苦の末、機織る妻のもとに帰ってきた百合若大臣が、強弓をキリリと引き絞って悪人ばらを射殺す。オデッセイそのままですね。ユリワカ=ユリシーズ。音も似ています。
てっきり室町時代あたりに海外から伝ってきたのかと思っていました。しかし違うという説が有力らしいですね。キリシタンバテレンとかいうんじゃなく、もっともっと早いレベルで伝播してきたものかもしれない。つまりホメーロスの語ったようなストーリーは、古くから大陸各地に広がっていた伝承・神話ではないだろうか。なるほど。
で、百合若と直接の関係はない話ですが、オデッセイが帰還してからの挿話です。妻のペネロペが出した課題は強弓に弦を張り、12本の斧を通す、です。強弓はわかるんですが、12本の斧がわからない。意味不明。鉄の斧に矢が通るか。
映画では2本ずつ戦斧を交差させ、間隔をもって並べると、二本の柄と刃の角度でつくる四角い隙間が一直線に6つできる。その6つの隙間を通して矢を射るという話にしていました。そりゃ難しいです。飛んだ矢がかすかでも放物線を描いたら下側にあたってしまう。限りなく一直線に矢は飛びぬけなければいけない。強弓と強腕が必要。なるほど。ただしこれは監督クリストファー・ノーランの考えです。
面白くなって調べてみたら、実際には諸説あるようです。わりあい納得できたのは、当時は丸い穴ををあけた斧があって、けっこう使われていたという。穴は重量軽減の意味かバランスのためか。ま、存在した。そういう斧を12本、穴の位置をそろえて並べた。で、12の穴を射とおす。
できるんですかね。でも絶対に不可能ではないだろう。でも、やっぱり変テコリンな斧です。
※ふつうの人には扱えない剛弓でも、うまく体を使って弦を張るコツがあるようで、たまたま海外の動画で見ました。弓と弦の間に片足入れて、体幹を使ったテコの感じでクイッとやると弓がたわむ。たわんだところでヒョイと弦をかける。賢いオデッセイならこうしたテクを持っていたのかもしれない。
※日本の弓の話。よく「五人張り」とかいいますが。あれは「五人がかりでようやく引き絞れる」という意味じゃありません。沖の船を射破って沈めた鎮西八郎為朝とか。子供のころはそう思っていた。実際は「五人がかり弦を張れる強さの弓だそうです。なーんだですが、毎回五人がかりじゃ大変。為朝本人にしか使えません。
※なんとなくゴチャにして言ってきましたが「オデッセイ」と「ユリシーズ」はラテン語とかギリシャ語とかナントカとか語の違いで、要するに同じなんだそうですね。書くとまったく違う人みたいですが、きっと発音すると似てるんでしょう。