「王たちの最後の日々」パトリス・ゲニフェイ

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原書房 ★★★
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同じ原書房から「王妃たちの最期の日々」とか「独裁者たちの最期の日々」という本があったらしく、ただし著者はそれぞれ別らしい。ま、いかにも食いつきそうなタイトルです。

この本で最初に出てくるのはシャルルマーニュ(カール大帝)。そこからズラズラと列挙して、最後はナポレオン3世。みんなフランスの王たちです。馴染みのあるのはやっぱしフランスの王で、英国ならまだしもですが、ジグムントとかヤン(ポーランドか)とか並べられてもイメージがわかない。

ということで通読。なるほど。ほとんど知らないことばっかりでした。シャルルマーニュの名前は多少知っていても、最後にどんな状況で死んだのかなんて、まったく知らない。槍試合で死んだアンリ2世のことは知っていても、槍先が刺さってからどんなふうに経過したのかは読んだ記憶がない。

あっ、関係ないけどアンリ2世ってのはカトリーヌ・ド・メディシスの亭主です。ついでにその愛妾が有名な魔美女ディアーヌ・ド・ポワチエ。シュノンソーの城主です。ずいぶん前に家内とロワール渓谷をふらふらしたとき、この城も見物しましたが、白くてきれいな城でしたね。たしか亭主が死んだあとディアーヌはカトリーヌに城を追されたんだったかな。

総じて言えるのは、王様の最後はたいてい惨めな雰囲気になる。死んだらすぐに解剖されてバラバラとか、心臓や骨が奪い合いになるとか。そして愛する者のために必死に書いた遺言書は、たいてい紛失してしまう。現代の某国政府に限らず、宮廷や役所の大事な書類はなぜか行方不明になるんです。

おまけに名医を集めたはずの侍医団はたいてい役にたたない。医者だって責任もつのが怖いから、危険な手術とか薬は投与したくないんです。よせばいいのに余計な浣腸とか瀉血とかやりすぎて体力なくして、苦しんで死ぬ。なかなか大変です。

そうそう。どうでもいい話ですが、ルイ18世(ルイ16世の弟。プロヴァンス伯です)は牡蠣のルイといわれたそうです。えらい大食漢で、亡命してベルギーだったかに着いた日に牡蠣を100コ、ぺろりと食った。その後も体重はべらぼうに増えて、晩年は数人ががりで運ぶのも大変だったらしい。体重が倍になった逸ノ城みたいなものかなと想像しています。

すべからく、あんまりスマートに亡くなった人はいません。ん? いたのかもしれないけど、そういうケースは後世に伝わらない。だいたい真面目に国家に尽くした王様ほど、国民には評判がよくない。地味はダメです。だから英国でいちばん国民に好かれた王様はたしかヘンリー8世。奥さんの首を斬りまくったけど、なんせ押し出しが立派で派手だったから好かれた。不公平なものですね。