「東眺西望」陳舜臣

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たちばな出版★★★
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どこかに「歴史エッセイ」と記してありました。なるほど。世界の歴史を総括的に、坦々と概観する。「歴史書」ではないですね。歴史を題材にした雑感です。

そういう意味で特に目新しい記述はないのですが、陳さんの人柄なんでしょうか、読後感がいいです。たのしいものを読んだという感じ。

強いていうと、通常のギリシャ・ローマ史観の流れにインドや中国などアジアを混ぜ合わせる。アジア史のほうが大きな影響力をもつ時代が長かった。世界の中心はアジア。ついでに、世界の中心はサマルカンド

たとえばスペインやボルトガル。従来の史書ではともすると国土復興=レコンキスタ以降の歴史しか強調されていませんが、実際にはむしろイスラム国家としての時代が長かったはずです。

もちろん個人的には、ウマイヤ朝イベリアの歴史を特に知ろうとは思いません。しかしグラナダの陥落は、ガスの溜まっていたラムネのフタをあけたようなもんでしょう。サラセンのフタがふっとんで、その噴出の勢いが大航海時代のエネルギーになった。そういう構図。なるほど。

そうそう。細かいこと。インドのムガール帝国ですが、ムガール=モンゴルだそうです。モンゴル帝国。いわれてみればたしかに。いままで思いつきもしなかった。