「漱石漫談」いとうせいこう 奥泉光

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sousekimandan.jpg河出書房新社★★★★

いとうせいこうは、よく知らないけど、あちこちで活躍している(たぶん)マルチな人。で、奥泉光は先日「雪の階」というのを読んだばかり。ちょっと風変わりで、悪くはない小説でした。

で、その二人が客を集めたステージで漱石を語る。ま、勝手きままな漫談です。一回に一冊をとりあげて、グダグダあれこれ語る。奥泉はかなり漱石ファンみたいです。

へーぇ・・・と考えてみると、自分はあまり読んでないなあ。なんとなく「漱石は好き」と思っていたけど、実は読んでないことに気がついた。

えーと、最初に手にとったのが確か「三四郎」で、それから「吾輩は猫である」かな。そしておそらく「虞美人草」「坊っちゃん」「倫敦塔」。「草枕」は途中で挫折したかどうか。あっ、どこかで「心」も読んでる。それだけです。

実際にはたくさんあります。「門」とか「行人」とか「明暗」とか。きっと数ページは読んだんでしょうが、辛気臭そうでやめた。たぶん。

奥泉はとりわけ「猫」が大好きらしい。数十回か数百回かは読んだといっていました。うんうん、納得です。自分も猫は大好きです。また「心」の構成はかなり変だという()。先生も変。行動もおかしい。理屈にあわない。はい、納得です。こんなムチャな本をどうして生徒に読ませて感想文を書かせるのか。文科省はなぜか「心」と「坊っちゃん」が好きらしい。読んでないな。

ついでに、いとうせいこうは「三四郎」の美禰子が大嫌い。だいたい引っ越しにエプロンつけて来るところが心根が透けて汚いという()。つい笑ってしまいました。ちなみに奥泉は美禰子がそんなに嫌いではない。

そうそう、なるほどと思ったこと。漱石が朝日新聞に入ったことは、いまならアメブロを選んだような仰天レベルだそうです。ちなみに「アメブロ」とは、アメーバ(Ameba)のブログのことです。末は博士か大臣のはずが、しがない(と思われていた)ネットの活躍を選択した。すごい。

変というなら、ほとんどの小説が変ですね。主人公の行動がまったく理屈にあわない。ちなみに「坊っちゃん」、最初から最後まで、実はほとんど言葉を発していないそうですね。コミュ症。心が通うのは女中の清だけという男。こんな寡黙な主役はいない。

たしか昼食用にサンドイッチも作ってきましたね。当時はどんなパンだったのか。ちょっと興味あり。