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× 早川書房

saishuuteiri.jpgクラークもトシくってからはどうかな・・と心配しながら開始。そもそも共著に面白いものはないですね。でも今回はクラークとフレデリック・ポールだし、ひょっとしたら・・と期待。

場所はもちろんセイロン、今ではスリランカですか、そこの大学に通う数学狂いの学生が主人公。よせばいいのにフェルマーの定理にとりついてしまって。しかも宇宙の果てに生息する超越の意志があり、その連中、地球の将来に危惧をいだいて(ありゃ暴力的な連中だ。みんなが迷惑するぞ)、さっさと始末しようと計画し・・・。

はっきりいって駄作。クラークの良さがなーんにもない。かといってフレデリック・ポールの軽妙さは完全に空回りして田舎芝居になっているし。3分の1ほどガマンしましたが、ついに投げだしました。

教訓。やはり共著に良いものはない。どんな大家でもモーロクしてからの本はダメ。井上靖しかり、丹羽文雄しかり。水上勉は読んでないから知らない。まして風合いのちがう老骨二人がいっしょに書いたものなんて、手にするもんじゃありません。

追記
思い出した。老残劣化の代表格といえば武者小路実篤か、前からそうだったけど晩年の文章特に酷かった。ついでに筒井康隆もよせばいいのに朝日で酷いものを連載していました。これも恥ずかしいくらい。若いころはセンス、悪くない人だったんだけどなあ。

★★ 講談社

ヴィクトリア女王の御世が大英帝国の最盛期だった・・ということは知っています。また第二次大戦以降、帝国は衰退し、米国にとってかわられた。これもまあ常識の範囲でしょうね。ではこ間、どこで英国は凋落を始めたのか。はい。よく知りません。

teikokuno.jpgこの「帝国の落日」上下巻、ヴィクトリア女王の即位60周年祝典から稿を起こします。このへんが頂点だったということのようです。で、何がキッカケとなって英国は衰退を開始したのか。

著者は「ボーア戦争」と主張しています。この戦争、高校の世界史教科書には必ず載っているけど、内容はほとんどわからない。せいぜいで「オランダ系の住民=ボーア人」と英国が戦って、勝ったことは買ったけど英国は手ひどい打撃をこうむった・・という程度。

で、「帝国の落日」を読めばそのへんが分かるかというと、実はよくわからない。金鉱脈の利権がらみでアフリカの貧しい移民たちを相手にした「ちょいとした制圧戦」が、いつのまにか本格泥沼ゲリラ戦、総力戦(ボーア人にとって)になってしまった。それまでの植民地での戦争と違うのは、まがりなりにも白人、武装したプロテスタント、女子供も含めた住民との戦いだったこと。なんかドイツが武器援助などバックアップした雰囲気ですが、ま、英国にとってあんまり経験したことのない戦いだった。

農民百姓を相手の大苦戦で、要するに威信が大きく傷ついたんでしょうね。動機もそもそも感心できないものだったし。

前から感じていることですが、なんか英国の外交政策というのは、一種のアマチュアリズムみたいな印象がある。じゃ他の国はプロなのか?と問われるとそうとも断定できないのが困りますが、システムではなく、人的関係とか、人柄とかによって外交や政治が左右されるような気がしてなりません。

たとえば日本で(あくまでですが)小泉S次郎という政治家が気の利いたことを言ったとする。もちろん日本ではまったく相手にしてもらえません。こういう人を取り入れるシステムがない。しかしこれが大英帝国でコーイズミ公爵のご子息は小才がきいているという評判になると、首相や大臣も気に入って、突然インド総督に任命したり。で、任命されたコイズミ総督が縦横に手腕をふるって(本国の指示をあおごうとしても遠すぎる)、結果的にインドの運命を変えてしまったりする。

かなり乱暴な言い方ですが、ま、そんなふうな印象がありますね、英国には。

これがエリザベス一世の時代なら、寵臣のナントカ侯爵が女王におねだりしてアメリカ遠征軍の指揮をとらせてもらうとか。素人丸出しで好き勝手やって、失敗すれば首チョン、またはロンドン塔、たまたま成功すればガーター勲章で現地総督になって栄耀栄華。

なんか話が横へ横へズレていくなあ。収拾がつかない。やめます。

ま、いずれにしてもパックス・ブリタニカといってもインドは元からグチャグチャになっていたし、中東はアラビアのロレンス暗躍の頃から支離滅裂になっていたし、アイルランドは独立するし、カナダやオーストラリアは生意気になるし。こうした世界の動きを徹底的に弾圧しよう・・・とはしなかったのが英国。

つまり、けっして帝国主義=悪人じゃない。「あの色付き人種の甥ッ子ども、困ったもんだなあ」と心から心配している伯父さんみたいなもんです。なんとか助けてやろうとは思っている。しかしその発想はいわゆる「上から目線」ですわな。だから感謝してもらえない。常にピントがずれている。親切したのに喜んでもらえないから伯父さんも傷つく。

大成功した会社の会長みたいなところもあります。大成功したことがあるもんだから、新しい経営方針が立てられない。古株幹部の記憶にあるのは過去の成功体験・成功手法だけ。それでもふんぞりかえって偉そうにしていたら、あれっ?黄色い猿みたいな軍隊にシンガポールを陥落させられてしまった。パーシバル、山下のYesかNoか!です。白人が黄色人種に完敗した。

ま、そんなこんなで自信を失い、植民地をどんどん失い、さらに生意気なナセルをやっつけようとしたスエズ侵攻で決定的に国際的な信用を失い、わけのわからないコモンウェルスもアイマイなままでであり続け、いまのブリテンになってしまった。イングランドとスコットランドと北アイルランドの連合王国。欧州大陸からぽつんと離れた島国です。ヨーロッパでさえない。

なんかなあ。衰退の理由がわかったような、やっぱりわからないような。ヘンテコリンな本でした。もちろん歴史書、史書ではありません。「歴史をメインにおいた逸話集」みたいな本ですね。呼んで損はしなかったけど、さして感動も残らないような・・・。けっこう疲れました。

★★ ちくま文庫

サイトで書評を見て、つい買ってしまいました。

著者はなんか池田勇人の首席秘書官をやっていた人らしい。名前にはかすかな記憶があります。

jimintou.jpg池田が没したあとは東急の五島昇(たぶん)に拾われて、非公式に大平正芳のアドバイザーみたいなことをやっていた様子です。つまり自民党の内情をイヤというほど知っていた人。というより中で暗躍していたキーパーソンの一人なんでしょうね。

この本は三角大福の抗争あたりから始まり、最終的にロッキード裁判、中曽根康弘の総理就任前後までが描かれています。中曽根時代にはもう表舞台から身を引いて(引かざるをえなくて)新聞テレビを見て自分なりに分析してるだけですけど。

内容は、想像通り。みーんな大臣・総理になることしか考えていない。どうしたら政敵を蹴落として、自分が生き残れるかしか頭にない。嫉妬心のかたまり。力で脅すか、損得でうったえるか、言葉で騙すか。えげつない派閥と派閥の押し引きです。当然でしょ?というスタイルで、なまじきれいに飾っていないだけ面白い本、ともいえますね。そうそう。登場する新聞記者連中も、記者なのか政治家の走り使いなのか判然としません。政治記者あがりの秘書とか議員がたくさんいるのも納得です。

★★★ 早川書房

wolfhall.jpgてっきりオリバー・クロムウェルを描いた作品かと思ったら、そのご先祖、ヘンリー8世の寵臣として権勢をふるったトマス・クロムウェルが主役でした。けっこう厚い上下巻。

トマス・クロムウェル、ほとんど知らない人物です。トマス・モアを失墜させた人物といわれれば、そうだったかな・・という程度。貧しい生まれから身を起こして、ヘンリー8世に気に入られ、離婚問題を解決する手段だったのか財政問題からだったのかはともかく、国教会の分離とか修道院の解体とか、神話的な辣腕ぶりで英国を大改革した(少なくとも結果的に方向を決めた)人間のようです。

ま、そんな歴史的な功罪はともかく、非常に面白い小説でした。登場人物のキャラターがユニークというか、とらわれないというか、ストーリーの進め方や文体も非常にクールで魅力的。ただし、人によっては「あっさりしすぎで読みにくい」と思うかもしれません。

ヘンリー8世も、キャサリン・オブ・アラゴンもアン・ブーリンも、ジェーン・シーモアも、もちろん政敵であるトマス・モアも、みんなしっかり描かれています。ワンパターンの悪人や善人はいないし(ただし度し難いアホや脳タリンはいくらでも出てくる)、みんなそれぞれの小さな正義感や理想主義や欲得感情で動いています。強いていえば主人公のトマス・クロムウェルが、ちょっとカッコよすぎるくらいかな。冷静で強靱で雄弁で、計算が速くて超人的な記憶力を持っている野心家。(ハンニバル式の「記憶の宮殿」を持っています)

時代が時代なので、疫病がはやれば人々はあっさり死にます。環境も劣悪。ちょっと病気になればすぐ死にます。クロムウェルの妻や溺愛する子供も簡単に死にます。

ある程度、この当時の人間関係とか勢力図を知っていないと、ストーリーが混乱するかもしれませんね。たぶん意図的にでしょうが、急に時代が飛んだり場所が動いたりします。その叙述がいつの話なのか、どこでのことなのか、ちょっと油断すると混乱してしまう。でも、文体は現代的で、妙に魅力がある。ハードボイルド小説に似た雰囲気もあるかもしれません。けっこう笑えたりもします。

ストリーそのものはアン・ブーリンが二人目の子供を流産したあたりで唐突に終わりますが、このトマス・クロムウェル、栄華をきわめたあと数年で急に逮捕、ロンドン塔、死刑という運命だったらしい。だからワンマン国王は信頼しきれない。

ウソか本当か知りませんが、ヘンリーの何番目かの妻、これを外国から呼んで薦めたのが運のツキだったという説もあるらしい。どこの国から来た人か覚えてませんが、似顔絵が似てなくて超不細工だったということになってます。王昭君の逆パターン。ヘンリーは新王妃を嫌って床入りも1回か2回だけと他の本で読んだ記憶もあり。もちろんすぐ離婚したそうですが。

案外、真実かもしれません。

ま、拾い物でした。非常に面白かった。でも、とうぶんは再読しないと思います。

★★★ 白水社

touou.jpg東欧革命とは、もちろん鉄のカーテンの東側、ワルシャワ機構の衛星6カ国が崩壊したパプニングのことです。当時の感覚としては、仮に解体がおきるとしても、まだ数十年先の話だろうという感じでした。なんとなくゴルバチョフとという一人の人物が勝手に騒いで突っ走った結果のように思い込んでいました。

分厚い本です。何センチあるのか厚みを測ってみたくなる。でもその割には、まあまあ読むのも苦になりません。著者はハンガリーのジャーナリストのようですね。したがって「研究書」ではなく「ドキュメンタリ」です。

意外だったこと。

・まずゴルバチョフは決してソ連帝国解体とか、共産主義否定論者ではなかったらしいこと。むしろ本人としては「正統派のレーニン主義者」だったようです。ソ連は本来のあるべき共産国家に立ち戻るべきだ。そのために改革、情報公開

・当時のソ連首脳部はみんなガチガチの保守保旧だったけど、年寄りになりすぎていた。それで、次の書記長を選ぼうという場になって、適当な人物がいない。たぶん消去法で、若くて頭の切れるゴルビーがトップに選ばれてしまった。やる気まんまん新勢力の台頭です。

・ゴルビー、もちろん賢いけどどうもたかをくくっていた気配がある。衛星国のことよりソ連が大事。なんせ国家にカネがない。ソ連の抜本建て直しだぁ。衛星国はいままでみたいに面倒をみなくても、彼らは彼らなりに考えて、ま、従来通りソ連にくっついてくるだろう。それほどバカでもないはず。

・当時の東欧諸国、例外なく経済的に末期状態だった。官僚主義、コチコチの計画経済のどんづまりですね。で、破綻しちゃ困るからに西側から膨大な借金をした。つまり、借金して国民に食料を供給したり、賃上げしたり。その場しのぎで国民の文句を封じ込めてたんでしょう。

・ただし経済の展望はまったくない。このままじゃどうにもならないことは承知していたけど、そこが閉鎖的・無責任態勢の官僚国家、なーんも決められなかった。どっかの国に似ています。優等生と思われていた東ドイツでさえ、内情は破産寸前の悲惨な状況だった。

・そんな貧乏国になぜ西側の金融筋が金を出したかといえば、もちろんソ連の存在です。いざとなればあいつらの親分が保証してくれるだろ、きっと。ソ連なら金はあるさ。

・しかしいちばん大きな問題点は、親分のソ連も同じような悲惨な状態だったことですね。そもそもが膨大な軍事予算に苦しんでいたし、特にアフガニスタン侵攻の失敗が響いていた。原油価格なんかも下がっていたんじゃないかな。(今のプーチンが原油価格高騰でウハウハなのと正反対)

・要するに、盟主であるソ連が貧乏な衛星国の面倒を見てあげられなくなっていた。資金源をなくした派閥の領袖。人のことなんかかまってる余裕はないぞ、ということ。もう知らんから、みんな責任もって好き勝手にしなさい。ソ連式モンロー主義。「マイ・ウェイ」のシナトラ・ドクトリンです。

・一昔前なら、チェコやハンガリーで反乱がおきれば、堂々たるソ連の戦車群が突入しました。あるいは、各国の秘密警察とか軍はソ連の後ろ楯を信じて、安心してデモを排除できました。しかしみーんな西側から借金しているような情勢では、どの国もあんまり無神経に乱暴するのがはばかられる。だんだん世間の「評判」というものを気にするようになったわけです。

・困難な情勢ですね。文句言う国民をあまり露骨に殺すわけにもいかない。強攻策をとりたいけど頼みの綱の親分のソ連があてにならない。「助けてくれ」とゴルビーに要請しても「出兵はしない。口も出さない。みんな大人でしょ。自分で考えてね」という返事。で、仕方なく各国、それぞれに考えて対策をとった。でもついぞ慣れない「ほんとうに自主的な決定」なので、ほころびと計算外の続出。

・ガラリと方針変更し、閉じこもったソ連。情勢の劇的な変化を信じられなくて、従来パターンの対応しかできなかった衛星国の首脳。なんか風向きが・・とおそるおそる動き出した国民。そうした細い々々流れが、なんかの拍子であっというまに(ほんの数日で)奔流になる。

・細かいことは覚えていませんが、東ドイツから続々と人々がハンガリー経由でオーストリアに脱出するシーンが当時のテレビで流れました。どういう理由でハンガリー・オーストリア国境に穴があいていたのか、そのへんはこの「東欧革命1989」を読んでも明確ではありません。乱暴に言うと、たまたまの偶然、成り行きというのが正解かもしれないです。

・偶然というのなら、ベルリンの壁の崩壊も、なんか偶然の要素が大きかったらしい。政府高官の言い間違いとか、意志の疎通がなかったとか。なんやかんや。最終的には警察や軍がやる気を失って、制圧に動かなくなったのが流れを決めた。

あらためて全体を追うと、なかなか面白かったです。終わったことではなく、これから近くのあの国でも起きうるシナリオかもしれない。

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