「桃色浄土」 坂東眞砂子

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★★★ 新潮文庫

fuji.jpgこれも本棚から引っ張りだして再読。読みきれなかったので、バッグの底にいれ家族で甲府へ遊びにいきました。

甲府では何といってすることもないのでサントリーのワイナリーへ。グラス1杯100円とか200円払って試飲をしたり、畑ツアーのバスに乗り展望台で案内嬢のイチ、ニイのサントリー! という合図で写真を撮ってもらいました。定番チーズ!の代わりにサントリー!を流行させようと企んでいる模様です。

天気予報が外れて意外な好天。それでも霧だか雲だかで富士山はボケてました。裏富士ですね。

で、「桃色浄土」。土佐の足摺岬あたりの漁村が舞台で、時代は明治の終わりか大正あたり。もう採りつくしたはずの希少な桃色珊瑚が出てきたというので平和な(はずの)村がザワザワし始める。欲にからんで若衆たちが殺気だつ。

momoiro.jpg沖にはぽっかり白い異国船が浮かんでいます。高知の高等学校から戻ってきた坊ちゃんはイライラしています。村でたったひとりの海女は今日も魚のように潜っています。普陀落渡海 を計画している生臭坊主は日々危険な鍛練に励んだり、お供えの芋を食ったり、たまには色気の残った婆さん相手に堕落したりもしています。

りんという海女の娘がいいですね。真っ黒に日焼けした独立独歩の原始の少女。グジュグジュしていない。意志が強くて海だけを愛している。

ついでに生臭坊主もなかなかいいです。乞食坊主だけど普陀落渡海の計画はまったく嘘というわけではない。真剣に考えている。いい汐がきたら舟をしたてて南海へわたって観音様に会える・・・と少しは信じている。

どういうエンディングだったかなあと記憶をたどりながら読みましたが、そうか、そういうクライマックスにしたのか。けっこう怪異というか、人間界と自然、冥界の混交したような海辺のおどろおどろしさ。

最近テレビでやたら耳にする「さわやかな自然」ではなく、人間と対立する要素をふんだんにもった「恐怖の自然」でしょうか。海って、夜なんかはけっこう怖いものです。波打ち際の向こうに何かがいそう・・という雰囲気。面白く読めました。