「鉄道大バザール (下)」 ポール・セルー

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★★★ 講談社文庫

いやー、てっきり黄砂と思ってました。

図書館から「下巻がありましたよ」と連絡があって、受け取りにいった帰り、北の空がどんより黄色いことに気がつきました。くっきり色が違っていて、それがどんどん迫ってくる。あれれ、こりゃ黄砂だ。中国かモンゴルかは知らないけど、早く帰らないといけない。

家の近くへたどり着いた頃には風もビュービュー吹き荒れてくる。もう全天の半分くらいが変色している。あらら。PM2.5まみれになってしまったかな。

テレビつけたら「煙霧」だそうです。なんだ、それは。気象庁がまた新語を開発したのか。


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で、鉄道大バザールです。下巻の旅はラングーンから始まってタイ、マレーシア、シンガポール。戦時下のベトナムを通って日本。そしてナホトカにわたってシベリア鉄道。

日本を好意的に書くわけはないなと予想してましたが、案の定でけっこうクソミソ。かなり誇張してるけど、ま、まんざら嘘でもないです。ロボットみたいに動き回る連中+訳のわからない好色文化。それでも京都に関してはわりあい気に入ったみたいですね。これは少し意外でした。

ズルして流用。本当の下巻は青基調です


上巻説明で「中年の作家」と書いたけど、実はまだかなり若かったようです。阿川弘之が「シニカルな青年」と書いている。調べてみたら1941年生まれだそうで、するとこの本の出た1975年にはまだ34歳ですか。

鉄道オタクの阿川先生、どうしても黙っていられなかったらしく、日本の旅の部分では注釈を入れてます。45秒停車ではなく1分停車だとか、トイレ使用中のランプ点灯の色が違うとか、この特急は野辺地には止まらないとか。実はセロー青年、そのへんをかなりいいかげんに書いてるもんで。

続編にあたる「ゴースト・トレインは東の星へ」でこの当時は奥さんとの関係が破綻しかかっていたとか書いてましたが、たしかにシベリア鉄道のあたりは雰囲気がみじめに暗いです。最後のほう、ロシア人に会うたび「けだもの!」と喚き続けてるあたり、ちょっとジンときます。もちろんニコニコしながら英語で罵ってるんで、ロシア人にはわかりません。正直にロシア語で罵ったら殴られますわな。