「氷山の南」池澤夏樹

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★★ 文藝春秋

hyozannominami.jpg少年が密航して氷山曳航プロジェクトに参加するお話。

南極の氷山をなぜ曳航するかというと、オーストラリア南岸まで運んで灌漑用水にするため。土地はたっぷりあるのに肝心の水がないのがオーストラリアの悩みですからね。もし成功すれば、けっこう面白いことになる。

氷山の大きさは1億トン程度と書いてありました。えーと、タテヨコタカサが500メートルなら、ざっと1.25億立米。実際にはそんなに厚くないから、仮に800m×200m×80mでもいいでしょう。それを特殊なカバーで覆って、ゆっくりひっぱる。小説の中では大型タグボートを使って時速1ノットということになっていました。

池澤夏樹のこのての小説、基本的に悪人は登場しないし、みんな善人で気持ちのいい連中です。それがなんやかんや小さな事件を介して会話しながらすすんで読者は勉強させられる。

で、今回もアイヌの血をひく少年、アボリジニの少年、アラブの実業家、推進する学者、計画に反対する氷教徒、なぜか少年に関心を持つアジア系の女性などなど、盛りだくさん。ま、それなりに読める本です。

一種の教養童話のような雰囲気ですね。