「100のモノが語る世界の歴史 3」ニール・マクレガー

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★★ 筑摩選書
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最終巻です。副題は「近代への道」。大英博物館のコレクションから100点を選んでいますが、日本のモノとしては柿右衛門の派手な磁器の象。いかにもインドふう彩色で輸出専用でしょう。長崎出島だけに制限されてはいたものの、日本は海外相手にけっこう積極的に商売していた。お金になるんなら、民間は懸命に励むんです。

もうひとつの日本モノは北斎の富嶽三十六景。なんという絵だったっけ。大波に翻弄される小舟のやつです。うん、神奈川沖浪裏。これもたぶん数千枚は刷られていた。たしか1枚の上限が16文だったとか書いてありました。かけ蕎麦2杯だそうです。完全に庶民用ですね。

などなど世界のコレクションが紹介されてきて、最後のほうでは女性参政権運動を象徴するペニー貨(片側に「女性に投票権を」とか乱暴に彫ったもの)とか、小さなソーラーパネルとか、クレジットカードまで出てきます。なるほど、数百年後にはこうしたプラスチック製品が時代を象徴するコレクションとして珍重される可能性もありますね。

その時代ではありふれた平凡な品物が、後世になって希少な美術品になる。東京の小金井公園に「江戸東京たてもの園」という野外博物館があり、古い建物が移設されています。有名人の家とか高価な家具はわりあい保存してもらえるけど、平凡な庶民の家屋とかありふれた醤油屋、床屋などは誰も気にしない。実はそういう平凡なものがいちばん残らないんだそうです。ハッと気がつくと、痕跡も残らなくなっている。そして後世になると貴重品になる。

著者は大英博物館の館長らしいです。なぜかこの4月からは東京都美術館で「大英博物館展―100のモノが語る世界の歴史」という展示が開始されるらしい。偶然とはいえ、面白い本を読むことができました。