「出雲の阿国」有吉佐和子

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★★★ 中公文庫
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出雲の阿国ってのは、ほとんど資料がないようです。元禄年間にクニという女が「ややこおとり」あるいは「かふきおとり」を踊って人気を得た。男装してちょっとエロチックな演出が斬新だった。天下一と称されたとか、当時のファッションリーダーだった名護屋山三(鑓の山三)の愛人だったとか。

踊りって、記録できるものではないので残らないんですよね。一瞬で消えて、観客の記憶にだけ留まる。というふうに乏しい資料をもとに有吉佐和子センセが一代記を創作してしまった。

出雲山中タタラの男女が駆け落ちして、その間に産まれた女が踊り好き。都へ出て名をなし、日本中(といっても京都・伏見、江戸ていどかな)で評判をとった。この阿国に刺激されて遊女歌舞伎が生まれ、若衆歌舞伎となり、やがて野郎歌舞伎に続く。要するに現在の歌舞伎の創始者ですな。

そういう「歌舞伎史」としてもけっこう面白かったです。この阿国、流行し始めた蛇皮線(三味線)には抵抗を示す。鉦と笛が本道よ、やっぱ。創始者だったけど時代に取り残されてしまった。

ま、そういうお話です。有吉佐和子の小説としては代表作とはいえない感もあるけど、ま、読んで損はないですね。秀吉の御伽衆とか、結城秀康とか怪物大久保長安とか、権力者を次々と登場させてからませる。けっこう楽しめる上下本でした。