「犬と鬼」アレックス・カー

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★★ 講談社
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読むのが億劫だなあ・・と放置していましたが、借出し期限も迫ってきたので、ササッと読了。

うん。やっぱり気分の悪い本です。ただし書いてあることは真実。真実であっても、嫌なことをビシビシ指摘されると、うーん、気ぶっせい。

細かく書いても仕方ないか。要するに日本は日本の良さをどんどん抹殺する方向に進んでいる。とくに60年代あたりから顕著。日本中をコンクリート漬けにして、海岸をテトラポットで埋めつくし、河川にダムを作りまくる。

日本の役人、世界レベルからすると比較的清廉なほうだとは思うのですが、そうはいっても所詮はお役人です。利権構造はあるし、天下りは楽しみだし、予算は使わないといけないし、縄張り意識は強いし。

そうそう。完全に破綻したはずの全国植林行政ですが、結果的にいたるところにスギ人工林ができあがって、しかも採算があわないから手入れが悪い。スギ花粉をまきちらす陰鬱な山ばかりできあがっています。でも植林作業は継続している。官公庁の仕事ってのは、いったん決まると止められない。意味があろうとなかろうと、巨大タンカーのように直進し続ける

「犬と鬼」というタイトルですが、狗を描くは難く魑魅を描くは易し。想像上の「鬼」や「幽霊」の絵を描くのはとても簡単だけど、誰でも知っている「犬」を描くのは意外に難しい。みんなおどろおどしい「鬼」を描くのが大好きで、地味で堅実な「犬」には興味を持たない。

だから地方自治体は、ちょっと予算があると役にたたない「派手な市民センター」など箱モノを作りたがる。これは「鬼」です。でも電線を地下に埋設するとか、下水道網の完備という地味な仕事には興味をもたない。そうやって、日本はどんどん進んでいる。これからどうなるんだろう。

どうなるんでしょう。

京都なんかに関しても、褒めてるのは日本贔屓で目の曇ったガイジンだけ。古い町並みを残すどころかどんどん悪趣味な建物を作り続けている。一般家屋もそうで、狭くてコンクリートと合板とプラスチックの家ばっかり。「狭いのは平野が少ないから」というのが言い訳ですが、それならイタリアなんかはどうする。みんな山地に工夫して家をつくっているぞ。古い家が不便で新しいのが便利は承知だけど、でもなぜ極端に走る。周囲と調和をとった建物がつくれないのか。

口うるさい叔父さんに正論で叱られているようで、読後感は最悪。でも時々はこうした本を読まないといけませんね。いい気になりすぎちゃ、いかん