「烈風のレクイエム」熊谷達也

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★★★ 新潮社

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マタギ小説「邂逅の森」の作家です。この人、上手なのか下手なのか判断に困る部分がある。

「烈風のレクイエム」の主人公は岩手種市生まれ(朝ドラあまちゃんで南部潜りが紹介されてましたね)の潜水夫。函館で潜水作業船の親方していたんですが、昭和9年、函館大火に出会う。死者2000を越える大災害だったようです。妻子を探して潮風と猛火のなかを動き回るシーンは迫力あります。

熊谷達也の書くものって、読んでるだけで肌に痛みが感じられたり寒かったり煙かったり、迫真ということですか。描写は独特です。(「邂逅の森」では熊に足をガリガリ齧られる。あれは痛そうだった)

で、女房子供を失って、また新しい妻子を得、平穏と思ったらこんどは昭和20年の空襲。グラマンにやられてしまう。踏んだり蹴ったり。そしてまたまた、今度は昭和29年の洞爺丸。要するに函館ってのは大きな災害戦火に3回も出会っている。それが理由で小説の舞台にしたんでしょう。

主人公は例によってちょっと職人肌で半分スーパーマンでストイックで、これも定番。しかし完全無欠ではなく、イライラして女房に当たったりする。これもお馴染み。雨風冷たい北国でじーっと耐えながら歳をとり、子供が成長していく。ま、それだけといえばそれだけのストーリーです。