「ドクター・スリープ」スティーヴン・キング

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★★★ 文藝春秋
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刊行まもないようです。シャイニングの続編。シャイニングってどんな小説だったかなと少し考えましたが明確には思い出せず。女の子が友達を殺すのはキャリーだし、えーと・・冬の高原の恐怖ホテルの話かな。動物形の植え込みが動き出すやつ。

そうでした。で「シャイニング」の主人公の少年が生き残って、どんな人間に成長したか。超能力は少し衰えた。父親と同じで酒が好きになり、やがて酒に溺れた。超能力(シャイニング)は辛いんです。酒を飲んでいるときだけはそこから逃避することができる。

だいたいキングの小説に出てくるモンスターやゴーストは、客観的に実在するというより、そうした超能力者が呼び寄せていることが多いです。「いる!」と思うから存在する。しかも単なる想像の産物ではなく、それ(IT)は物理的な力も持つ。幽霊に首を締められると、ほんとうに窒息してしまう。

「吸血鬼の町」でしたか、飲んだくれ司祭が一時だけ信念をもつと、単なる水が聖水に変化する。信念がゆらぐと、ただの水に戻る。「IT」では少年の持っているオモチャの銃が破壊力抜群の本物の銃に変化する。でもすぐもとのオモチャに戻ったりする。

今回はけっこう魅力的な少女が登場します。彼女のもつ能力はスーパー級です。ただしまだ子供なので、うまく使いこなせない。そうした少女とシャイニングの主人公(いまは禁酒中の中年)が協力して、絶対悪と戦う。

この「悪」の連中がけっこう面白くて、吸血鬼みたいな連中なんですが、それほど強くはないし、物理的にはごく普通の年寄りグループ。愛嬌がある。一人だけ美人のリーダー格がいて、これだけは強い。でも永遠に生きるはずの一族は意外なトラブルにまきこまれて危機にひんする。かなりドジです。

後半はほとんどマンガです。恐怖小説ではあるんでしょうが、ま、それほど怖くない。そうそう、少女も能力を制御して将来うまく使いこなせるかどうか、少し心配。すでにカンシャクおこして皿を割ったりしているし。完璧なスーパーガールというわけではないんです。

またアルコール依存治療絡みの話がけっこう長いです。いわゆるAAミーティング。ちょっとかったるいですが、キングにとっては書きたいことだったんだろうな。