「習近平 共産中国最弱の帝王」矢板明夫

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★★★ 文藝春秋
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習近平が総書記になる前あたりに書かれた本のようです。著者はサンケイの記者。サンケイ、けっこう中国絡みの本が多いですね。力を入れているということなんだろうか。おしなべてそこそこ面白いけど、ちょっと強引だったりアクが強かったりする

で、例の太子党、共青団、上海閥についても説明。習近平は太子党。上海閥は江沢民、共青団は胡錦濤、李克強。この3つがシノギを削っているんですが、だからといって自民党と民進党みたいな関係でもない。強いていえば学閥ですかね。

なんとなく心情的に共有するものがあるけど、だからガッチリ結束しているわけでもいない。人によっては太子党グループだけどたまたま上海で仕事をしていたんで上海閥と関係があったりもする。だから「私は太子党だ」なんて公言する人間はまずいないらしい。

あっ、もちろん太子党ってのは特権階級の子弟です。特権階級ってのは、たいてい戦前から党員で活躍したような連中。長征、延安時代から戦っていたなんていうと、かなり偉い。

話は逸れますが、例の長征という代物、要するに勢力を失った共産党が奥地に逃げたということです。それを綺麗に表現すると長征。延安時代の党ってのは「某新興宗教みたいな雰囲気」と著者は言っています。ま、確かにオームだったんだろうな。各地から熱血的な若い女が次々と馳せ参じて、幹部連中はたいてい糟糠の妻を捨てて再婚した。古妻が抵抗すると幹部連中が無理やり「説得」したらしい。

これも関係ないですけど、孫文もアメリカ帰りの宋慶齢に夢中になって、古女房を捨てた。なんでも日本へ呼び寄せて無理やり説得したみたいです。口がうまかったんだろうな。これは「革命いまだ成らず」で知ったこと。

ま、そういう本でしたが、面白かったのは薄熙来との関係をこの時点で記載していたことです。重慶で実権を握った薄熙来も太子党のホープですが、どうも習近平とはソリが合わなかった。習近平を敵視していたらしい。で、その薄熙来、スキャンダル暴露でやはり追放されましたね。何年も前からタネが蒔かれていた。

もちろん単純に「習近平の意向」なんてもんじゃない。胡錦濤派との関係やら何やら、いろいろ深いみたいです。中国の政治は複雑怪奇です