「歩兵の本領」浅田次郎

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hoheinohonnryo.jpg講談社文庫★★★

浅田次郎の自衛隊もの。短編の連作で登場人物は共通。浅田の旧軍ものでは占守島()の話とかありますが、自衛隊ものってありそうでなかったような。

浅田が属していたのは市ヶ谷の普通科連隊です。たぶん1970年台の話でしょうか。ちなみに三島が市ヶ谷で演説したのがちょうど1970年(昭和45年)、その後に入隊したらしい。

浅田の小説ですから手慣れた面白さですが、そうか、当時の自衛隊ってそんな感じだったんだ。新兵の質もひどいですが、ま、当時のことですからね。不良だろうがヤクザだろうが、なんでもいいんで募集係がかき集めた。全国の中学にさかんに募集のビラなんかが貼られていた時代です。

隊員の日常も旧軍の内務班さながらで、毎日しょっちゅう誰かがぶん殴られてます。ま、それでも旧日本軍ほど凄惨じゃないですが、でも殴る程度は日常茶飯。殴る理由もかなり理不尽で、メンコの数かさねた古参兵(8年兵!)が虫の居所が悪いという理由だけで殴るとか。

先日最終回があったらしいイケメンだらけの自衛隊青春ドラマ(たしかフジ。「テッパチ」だったっけ )なんかとはまったく異質です。ニューギニア生還とか予科練とか、当時はまだ旧軍の生き残りが自衛隊に残っていたらしい。

そうそう。この小説でやっと自衛隊の階級を覚えました。二等兵は2士、一等兵は1士、上等兵が士長。兵長は3曹で、軍曹は1曹。准尉という階級もまだ存在したんですね。(

 

千島列島の北端の島。もう終戦と思っていたのにソ連軍が上陸してきて、戸惑いながらも守備隊は善戦。手間取ったため、簡単に北海道の半分占領という計画が崩れてスターリン激怒。生き残りの兵はシベリアに送られた。

運動部ノリの隊員たちはドラマだからまあ仕方ないけど、防大卒バリバリ指導教官(2尉=中尉)が小柄色白のヒヨヒヨ女優というのはいけない。せめて日焼けドーランを塗ってほしかった。

たしか野間宏の真空地帯で知った階級です。少尉と曹長の間。ノンキャリのいちばん上ですか。