「王者の妻」永井路子

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oujanotuma.jpg中央公論社★★

同じ永井路子歴史小説全集の第14巻。主人公は豊臣秀吉の正室おねね、北政所です。

そうですね。これも妙に女くさい解釈が多い。秀吉の愛撫で陶酔し、京極竜子は対抗心でキャンキャンわめく。淀殿も高ピーで狭量。賢くて節度を知っているのは北政所だけ。あんまり感心しませんでした。

ただ、戦国の妻はほとんど何も知らされない・・という点はいいですね()。亭主が「さあ、戦じゃ」とか言ってバタバタ出かけてしまうと、後はなーんにもない。城を守ってはいても、情報はほとんど入ってこない。10日、30日、3カ月、何が起きているのか。あてにならない噂だけ。

だから「本能寺にて上様ご生害・・」とか急に知らされても、はて、どうしたものか。自分で考える。判断力の勝負。どれだけ素早く逃げることができるかがカギになる。

それにしてもどうして★が二つなのかなあ。自分で付けておいて、うーんと考えると、たぶん男どもに魅力がない。男が描けてないんでしょうか。それを言うなら、女どもにも魅力がない

 

最近の大河、大事な会議の席にやたら奥方が同席していますね。あれはいけない。表と奥は厳密に区別する。女性は戦に関与しない。大昔の独眼竜政宗なんか、怖い奥方(岩下志麻)は会議が終ってから(出席した家来を)自室に呼んで内容を聞いていました。もし言いたいことがあったらやはり間接的に伝える。
そうそう。思い出した。やはり大河の軍師官兵衛、侍女の私室だったか台所だったかで、殿様がマッサージ治療やってました。あれは酷い。奥方に知れたら大騒ぎになります。どんなに偉くても奥方のテリトリーを侵してはいけない。だから明治になってからですが、徳川慶喜がカメレオンのエサ(蠅)を探しに気軽に台所に出入りするのを見て女中たちは驚愕した。

(蛇足ですが、たとえば出陣の際の鎧着用。けっして女性は触らなかったそうです。禁忌。手伝うのは男どもだけ)