「現代語訳 特命全権大使米欧回覧実記 1」久米邦武

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kairanjikki1.jpg慶應義塾大学出版会★★★

明治初期、例の岩倉使節団の見聞報告録です。書いたのは久米邦武という人。たぶん全5巻くらいあって、その第1巻。アメリカ編ですね。次はイギリス編。

原文はカタカりまじりの漢字らしく。たぶん読めない。いや、読めるかもしれないけどな非常な難物でしょう。それで現代語にしてくれたのが本書。ありがたいことです。

という次第でとりかかったんですが、現代語でも大変。いや、面白いんです。でも軽く読み過ごすわけにはいかない気配。手間取りました。手間取ったあげく、3分の1も行かないで期限が来てしまった。

ほんの取っかかりだけの印象ですが、これ、いつ刊行されたものなのか気になりました。調べてみると、えーと、使節団が明治4年から6年。帰国して整理して、刊行が明治11年。明治11年というと、西南戦争が終ってすぐですね。そんな時代に、この久米邦武という佐賀出身の随行員はこれだけの知識と取材力、判断材料を持っていた。すごい。

当時の知識階級の優秀さが驚異です。まるで明治20年とか25年ぐらいの材料知識で書いた本といっても不思議ではない。維新からさほど過ぎてもいない時代、もうこれほど世界を勉強していたんだ。すごい。

・・という前置きをしてからですが、わかりやすい現代文へ置き換えたことで消えてしまった部分も多いような感じです。とくに距離とかサイズとか計量単位、あるいは風俗とか。明治初年の知識人がどういうふうに実際に筆記したのか、それを知りたい気もする。

それなら原文を読めよ!はなし。読めるわけがない。