「吉村昭歴史小説集成 七」吉村昭

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yosimura-shuusei7.jpg岩波書店★★★

読んだのは冒頭に収録の「冬の鷹」です。前野良沢

『ターヘル・アナトミア』を翻訳した『解体新書』の刊行は有名ですが、たいていは杉田玄白しか紹介されていない。杉田玄白、前野良沢、それに中川淳庵。三人の名が列挙のケースはすくないです。

ま、そのへんに興味をもった人はこの本を読むといいです。杉田玄白はもちろん超優秀で熱意あふれる医師。社交性もあったけど、語学者ではなかった。で、前野良沢ってのは語学至上主義、学問至上主義。有名になるために勉強してるんじゃないわい・・という、かなり偏屈な人.。

蘭語に正面から取り組み、たぶん当時の日本ではならぶ者がいないほどの語学力になった。あ、有名な平賀源内なんかはキラキラ輝く多才多彩の人ですが、良沢あたりからすると「あの山師が」でしょう。良沢ってのは付き合いづらいタイプだった。彼とうまくつきあい、とりこめたのは杉田玄白の才能です。

で、解体新書刊行。幕閣の取り締まりを恐れて良沢は名を記さなかったという説もあるようですが、「まだまだ訳として未熟と自覚」というのが吉村昭の考えのようです。こんな程度の訳者として後世に名を残したくない。もちろん真実は不明です。ちょっと綺麗すぎる理由のような気もしますが。

ま。そうやって、良沢は特に名をあげることもなく、地味に生涯をおえた。もちろん玄白は華やかな成功者として生きました。いまでも教科書に名前は大きく残っています。