「スエズ運河を消せ」デヴィッド・フィッシャー

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★★ 柏書房

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ロンメルの攻勢をかわすため、北アフリカの英軍は有名マジシャンをリーダーとしたカモフラージュ部隊をつくり、大がかりな偽装作戦を実行する。戦車をトラックに見せかけ、軍港の位置を移動させ、スエズ運河を消し、ハリボテ潜水艦を浮かべ、ボロ船を巨大軍艦にする。

ま、ある程度は可能な話で、いちおうは「事実」と称したノンフィクション仕立ての小説ですが、でも、かなり怪しい。調子がよ過ぎるというか、ま、ハリウッドB級冒険映画のノリです。

前に読んだコニー・ウィリスの「ブラックアウト」だったか「オール・クリア」だったか、(タイトルは違うけど一続きの小説です)、英国ケント州でゴム戦車をふくらませる偽装作戦の話が出てきました。もちろん大変な労働です。

原っぱにダミー戦車を置くだけでなく、上空を飛ぶ偵察機から本物に見えるように、草の上にキャタピラ(履帯)の跡をずーっと付けていく。跡がないとゴム戦車であることがすぐバレでしまう。(この「スエズ運河を消せ」でも、上空からみた「影」にこだわっていますね。影が自然でないと、すぐバレる。

ケント州のゴム戦車は、たしかノルマンディ作戦を隠匿するためのカモフラージュだったような気がします。意外な場所に大規模な戦車部隊が隠れているというような。第二次大戦ではけっこうこうした偽装が多用されたようです。