「天皇の世紀 7」 大佛次郎

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朝日新聞社 ★★★


手に入らないと諦めていた「天皇の世紀」だが、近所の図書館の閉架庫に保存されていることが判明したのがこの7月。喜んで数冊ずつ借り出し始めた。シミだらけの埃臭くなった古本だが、周囲の迷惑もかえりみず、主として通勤の行き帰りの時間を使って読み進めている。

tennou.jpgたいていは2冊か3冊を一緒に借り出して、3週間の期限の間になんとか読み終えているが、ちょっと時間が足りない。かなりの飛ばし読みだ。

巻7では薩摩の小松帯刀という人物に初めて興味を持った。維新に活躍した薩長サイドの人物にしては珍しく、たしか重職クラスの出身だったはずだし、大久保や西郷に匹敵する重要な動きをした人物なのに、明治になってからどうなったのをまったく知らない。ふつうなら新政府の大幹部として明治史に名を残すのが当然なのだが。

ひょっとしたら久光といっしょに鹿児島に引っ込んでしまったのかなとも思い、WEBで調べてみたらすぐ解明した。明治3年に病死。掲載されていた写真も予想外で、簡単には病気にもならなさそうな、引き締まった精悍な雰囲気のポートレイトだった。

小松帯刀、という名前は、おそらくどんな維新物にも必ず登場する超有名人物のはずだ。しかし何故か今までなんの関心も抱いていなかった。ふと疑問を持って調べてみようとすると、実に簡単に事実が検索できる。どんな事情で、どんなふうに死んだのか。小さなことだが、ちょっと感慨。数日後の夕食時、「龍馬がいく」に狂っていたことのある娘にこの話をしたが、もちろんさしたる反応はなかった。それでも「そうね、確か小松どんというのがいたっけね」と返事をしてくれただけでもマシというべきなんだろうな。