「告白」 町田康

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中央公論新社  ★★

 

kokuhaku.jpgあーくたびれた。

河内音頭のスタンダードナンバー「河内十人斬り」に「男持つなら熊太郎弥五郎、十人殺して名を残す」とうたわれた明治の殺人鬼のお話です。

これだけの紹介では何も言ったことになりませんね。でも、どう言ったらいいのか。そもそも町田康の本を読んだことのない人に、パンクロック歌手・詩人・小説家という町田康の本を説明するのは非常に難しい・・・。

冒頭、私は太宰の「ロマネスク」をなんとなく思い出しました。タイトルは忘れましたがナントカ次郎兵衛という主人公のお話。ケンカに強くなりたいと願って修行して、見事にケンカ名人になる。ただし町田康の描く主人公・熊太郎は見かけ倒しだけでちっとも強くはなれません。強くはないのに、でもヤクザものになってしまう。おまけに無教養な河内男の内部にはねじくれた自我と内省と臆病が巣くっているので、なんともやっかいなことになる。

アホである。役立たずである。頭でっかちである。しかも思念を実際の言葉にする術を持たない。口を聞けばいっそうアホにしか見えない。そういう男がさしたる自覚もなく、崩壊します。崩壊のついでに老若の村人10人を惨殺。山狩りの末、金剛山で自決。

で、なぜか彼らは一種のヒーローとして河内音頭に歌われることになってしまう。作者・町田康が騒ぎまくって饒舌に書きたてる河内弁の氾濫で読み手の頭の中までグチャグチャになる。へんてこりんな長編です。疲れます。ファンにとってはたまらん本なのかも知れません。