「飼いならす」アリス・ロバーツ

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明石書店★★
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副題は「世界を変えた10種の動植物」。アリス・ロバーツは英国の科学者でありジャーナリスト。なべてやさしく解説してくれる美人解説者だと思います、たぶん。

で、そんなたぐいの(わかりやすい)本かと思ったのですが、あんがい手ごわかった。

イヌとかウマとか小麦とかイネとか、人類とともに生きてきた(支えてきた)家畜や作物の話ですが、かなり専門的。最新の成果をとりいれて真面目に解説しています。真面目すぎる。しっかり読むには日時が短かすぎた。したがってこっちも真面目な感想は無理です。

ササッと読んだ頭に残ったこと。オオカミはたぶん人間に興味をもって近づいてきた。人間がオオカミを飼い馴らしたんではなくて、おそらく両方が歩みよった。両方にメリットがあった。

ウマはたぶん人間が無理やり迫ったんじゃないかな。しつこい奴が何回も何回もトライして、たまたまうまくいった。背中に乗せてもらった。テレビなんかで、よくシカとかイノシシの背中に小猿が乗ったりしてますね。あれ起きたのかなあ。

そうそう。野生動物だけでなく、実は人間も飼い馴らされた。野生動物は家畜化すると顔がやさしく(人間の目には)可愛ゆくなる。きつい顔のオオカミが愛嬌顔のイヌになる。同じことが実は人間にも起きていて、時代とともに人類の顔はやさしくなっている。言葉を変えると子供顔になった。ネオテニーですね。

もうひとつ。人類はアフリカ東部の大峡谷から発生したのかと思っていたら、これも変わりつつあるらしい。アフリカ中心という考えはまだゆるがないものの「アフリカを中心とした地域」程度に拡大。したがって中東なんかもふくまれる。たった一カ所ではなく、ほぼ同じ時期に複数の地域でということらしいです。

定説はほんと、変化する。世界でいちばん長い川は「ミシシッピーではない」と知ったのは40年くらい前かな。あれはびっくりした。舌には「特定の味覚を感じる場所が4カ箇所ある」も違っていたらしいし。その割にはまだ味覚部位説をテレビなんかで見聞きします。いったん染みついた「定説」はそう簡単にくつがえせません。