中公文庫★★
応仁の乱の時代を背景とした上下二巻。この時代をあつかった小説は珍しいです。ま、だから借り出したんですが。
うーん、感想が難しいなあ。小説仕立てにはなっていますが、そうですね、たとえば橋田壽賀子の書いたものみたい。やたらセリフで背景説明している。「これ、丸野丸衛門、そこの青い袋を左手に持って、戸を右に開けて表に出やれ」みたいな。「烏丸通三条の姫さまのもとへ腹痛にきくこの正露丸を二粒持参しておくれ」とか。
ま、説明しないと理解できないのがややこしい室町期の事物や背景ではあるんですが。仕方ないのかなあ。で、ストーリーは人買いに売られた少年が賢くたくましく、まるで学級委員長みたいに優等生でいきていく。そんな小説です。ダイナミックに筋は展開するけど、筋だけで身が少ない。汁がない
しかし最後まで読んで、あるていど理解できた。このころの資料として「慈峰居士像賛」というのがあるらしい。200~300字の難しい漢文(というか漢字の羅列です)。素人はもちろん、どうも専門家も自信をもって読み下しはできていない雰囲気すが、要するに「宇野玄周」という人について記されているものでしょう。どんな人物でどうやって成功したか。どう死んだか。そういう「賛」ですね。
それを見て書きたくなったんでしょうね。室町期に生きた男の一生の話。少年。少女。湯屋。戦い。成功。宇野玄周としての死。資料にとらわれているから主人公は胸板が厚い。相撲が強い。やけにすんなり成功する。など。
ただあんまり感動はしませんでした。澤田ふじ子ってこんな感じの小説書く人だったのかなあ。意外。
※大筋とは関係ないですが、作者は足利義政をわりあい評価しているみたいです。
※不思議なことに最近ネットの販売ページには「著者名を澤田ふじ子から定家治生に変更いたしました」という一文が追加されています。もしかして作者が澤田ふじ子じゃなかったんだろうか。もしそうなら納得。