文春文庫★★★
副題は権力・カネ・女。どこかで見た書評によると「田中真紀子研究」という本を改題して文庫にしたものらしいです。編集部との対談形式。
当時は田中真紀子が外務大臣をやめたすぐ後くらいだったのかな。編集部は真紀子人気で売ろうとした(多分)。しかし立花は真紀子を買っていない。政治家ではない「お嬢さん」と見ている。なので本の中身の7~8割は田中角栄についてです。
出回っている一山いくらの角栄本とは取材量が違いますね。膨大緻密。要するに角栄というのは巨大というか、ケタ違いというか。悪にしろ善にしろ行動力、とにかくすごい。単に「金権政治」の始祖なんてもんじゃなく(※)、いわばその完成形ですね。跳びかっている札束にしたって、世間の想像の何十倍。総裁選なんかだと10億とか20億とかのレベル。
角栄の力の源泉は官僚支配です。支配というより官僚たちの強い支持。官僚たちにとって理想の親分だった。力を貸してくれ。知恵を出してくれ。オレが実行する。責任はオレがとる。
たぶん、最初から金を手にしようとは思っていなかった。あくまで目的は理想の実現。しかし過程でなぜか金が飛び込んでくる。気前よく使う。思い切って使う。それでも多少は手元に残る。ありがたくいただく。ま。たいして用心もしない。そんな感じだったんでしょうか。
まったく知識なかったんですが、佐藤昭という人、ようやくイメージができました。同志にして愛人、有能な片腕。また周囲の秘書たちの忠誠も理解できました。角栄。すごい魅力・求心力をもった男がいたんだなあ(※)。日本中をひっかきまわして、決定的な方向をつけて、大騒ぎして消えた。
立花隆という人、角栄を好きだったのか嫌いだったのか。うーん。すごく嫌いだったけど、魅力を否定できない。そんなところかな。
※自民の金権腐敗ルーツははるかに以前からあって、戦後なら岸からかな。ただそれを露骨かつ何十倍にもしたのが角栄。いまの自民の腐敗の流れをつくったのは間違いなく角栄。
※真紀子は角栄のDNAを引き継いではいたものの、官僚たちの心をつかむ力はなかった。真紀子にとって他人は「家族」「使用人」「敵」の三種類しかなかったという。だから尽くしている秘書たちもみんな単なる使用人でしかない。なるほど。