2015年7月アーカイブ

こんな暑い日はボーッと家にいるのがいいんですが、サイズ確認する必要があるとかで家人から呼び出しがあり、吉祥寺へ。

買い物は(可能なかぎり)短時間で終了。時刻もあり、李朝園で食事をしました。そんなに回数は多くないですが、最近はけっこう利用しています。駅北のビルの4階にある大きな焼き肉店で、若い人なら「昭和の店」とか言うかもしれない。汚いわけではないが、きれいでもない。炭火コンロに100均ふうの網を使用で、盛大に煙が出る。

ロース、カルビ、タン塩、キムチと平凡に選んで、最後に白飯をひとつ。肉質もまずまずで、価格もまずまず。わりあいお勧めです。経営者はたぶん半島系でしょうね。北か南かは不明ですが、いかにも家族経営が成功してそのまま大きくなったような店舗で、テーブルレイアウトがスッキリしていなくて、たぶん増築をかさねて店舗面積を広くしたような印象。腰の曲がったお婆さんも現役で、フロアを元気にヨチヨチ歩きまわっている。

炭火で顔を火照らせ、たっぷり食べて7000円強。グリーンガムをもらって(これも最近は珍しい)、帰宅。

★★★ NTT出版
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タイトルはキワモノふうですが、実際の中身は正統な低開発経済学(そんな言葉があるんか)の入門書です。

たとえば1960年頃、韓国とケニアはほぼ同程度の貧困国でした。これから何十年、どちらがより発展するか、それを推測することは不可能だったようです。ケニアがどんどん発展してアフリカの先進国になっても不思議はなかったし、韓国があいかわらず最貧国であり続けてもおかしくはなかった。

しかし結果はご存じの通り。何故なのか。それを調べようというのがこの本のテーマです。

キーワードは腐敗と暴力。典型例はアフリカのサハラ以南、いわゆるサブサハラですが、内戦が日常化し、政府は腐敗し、産業は壊滅状態。展望はまったくありません。ではその原因となっているのは腐敗なのか、それとも暴力なのか。

経済学者の意見としては大きな流れが二つあるんだそうです。一つは「貧しいから腐敗している。腐敗しているから豊かになれず、暴力が支配する」という意見。解決策としては、思い切っていまの5倍くらいの援助をしてみたらどうだろう。豊かになれば腐敗は減少する。まともな給与をもらっていれば役人は、汚職しようという動機が薄くなるし、罪が発覚した場合の「免職」は致命的な損失になる。

つまり人間、ある程度豊かになれば悪いことは考えない、という説ですね。

もう一つは「腐った文化システムに生きる連中は、援助が増えればいっそう収奪に励む。なまじ援助を増やすよりも、社会システムの健全化を最初に考えるべき」という考え方。

つまり穴のあいた桶に水をどんなにいれても無駄。まず桶を修理しようということです。どうやって桶を修理するかは難しいですが、教育で啓蒙するとか強制するとか罰則をきつくするとか方法はたぶんある。

どっちが正しいのか、判断は非常に難しいです。難しいけど放置しておいたって解決しない。なんとか調査する方法はないか。

いろんな研究方法とその概略がのべられています。たとえば降雨量の少ない地域で水不足がおきると、その翌年あたりから内戦が勃発するパーセンテージが高くなる。内戦がおきると生活資源は破壊され、いっそう貧しくなり、さらにいっそう暴力がはびこる。こういう悪循環におちいってしまった国家を救うのは非常に困難です。

だったら「長期天気予報で水不足が予想されたら、不作になる前に援助を提供したらどうか」という策が考えられます。その援助で食いつないでもらう。食いつないでいるうちに、また雨が降って、豊作になるかもしれない。少なくとも致命的なバッドスパイラルからは逃れることができる・・・かもしれない。なるほど。

そうそう。その国家の貧困の度合いと腐敗的文化の相関について面白い調査もしていました。国連です。各国から国連に詰めている世界中の外交官たちは、みんな狭いマンハッタンへ通勤しています。ところがマンハッタンは絶望的なくらい駐車スペースがない。必然的に駐車違反が増えるんですが、幸いなことに外交官たちは特権があるので駐車違反に問われることはない。

つまり、好き放題に駐車違反できる。いちおうステッカーは貼られるみたいですが、知らん顔して無視しても問題なし。

こういうペナルティ・ゼロの状況で、各国の外交官たちはどれくらい駐車違反するのか。年間に数百回の駐車違反をしている奴もいるし、ゼロという人もいる。そうした個人の違反回数とその国の腐敗指数は関係があるのかどうか。

他にも密輸入の経済学とか、経済マフィアによる社会の安定化とか、なかなか面白かったです。

以前に読んだ「ダーク・スター・サファリ」のポール・セロー、彼は「アフリカに援助する連中が悪い」という持論です。むしろ安易に援助し続けるからアフリカが堕落する。しかも援助している連中は心の底からアフリカ人のためになる援助をしようとは思っていない。気分がいいだけの偽善。乞食に1ドルを与えることは本当に乞食のためになるのか

ただし、「ダーク・スター・サファリ」で列車の窓にすがる貧しい少女を拒んだセローは、憎しみに満ちた目の少女に石を投げつけらます。与えても解決にはならない。しかし与えないことも辛い。貧困国と真面目にかかわるということは、そうしたジレンマと痛みを感じることです。辛いです。


数日前から急にハードディスクが鳴りだした。カチカチカチっと、けっこう明瞭な異音が筐体から聞こえてくる。

うーん、ついにきたか・・と念のためCrystalDiskInfoでチェック。とくに異常はないなあ。二つあるハードディスクの古い方は13680時間、新しいほうは9167時間。けっこう使っているから壊れても不思議はない代物です。それにしても今は円安で、買うタイミングとしてはあまり芳しくない。

暫く耳をすませてみました。うん、数秒おきにカチチチチチとなっている。間違いない。

で、ふとこのシーン、デジャブのような感じがある。ん、待てよ。

そう。隣のリビングの扇風機。首振りの向きを変えるたびに異音をたてているではないか。ちょうど一年前に、まったく同じ心配をして、まったくおなじ解決。要するに学習していない。ほんと、アホやなあ。

夏のカチカチ、音の出場所を確認すべし
暑い・・・。

額から汗がひかない。脳が溶ける。といって「さあ夏だ!」という爽快感もないし。

★★★ 新潮社
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以前、司馬遼太郎の対談集に出てきたんでアレックス・カーという名前を知りました。日本の田舎に惚れこんで、徳島の祖谷(いや)の家を買って移り住んだ人です。祖谷は奥山も奥山、なんせ平家落人が暮らしたという秘境です。アレックス・カーにいわせると、日本にはここにしか住みたい場所は残されていなかった。

いい本でした。なんとなく気分よく「美しい日本」なんて言ってるけど、どこが美しいんだ。川という川はダム。海岸はテトラポット。どんな田舎にも立派な林道ができて空には電線、道路傍には毒々しいパチンコ屋がたちならぶ。

アレックス・カーにとって電線とパチンコ屋は天敵です。わずかに残された自然を浸食する害毒。京都が伝統ニッポンだなんてとんでもない。もうダムのない自然の川なんて、日本に数本しかない。そういえばカヌーの野田さんも河川工事を親の仇のように憎んでました。

なんとなく「日本の自然は美しい」という欺瞞の中にひたっている我々に冷や水を浴びせかけるような一冊です。「犬と鬼」も一緒に借り出しているけど、こっちはもっと厳しそうなので、読むのを後回し。


昨日土曜日、夕暮れの東の空に虹が立ちました。左右の根元の部分だけ見えて、上は雲の中。

七色というより、3色くらいの雑な虹。部屋に入ってテレビを見たら、ちょうど天気予報の時間で、まったく同じ虹がアナウンサーの背景に映っていました。そろそろ梅雨明けでしょうね。

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写真にとってみたけど、うーん、あんまり鮮明ではない。そういうモードもあるんでしょうが、何も考えずシャッターを切ったのでこんな画像になってしまいました。

で、案の定、翌19日。関東地方は梅雨明けです。暑い。記念として昨日の写真を掲載。
見ている前でPCが突然のシャットダウン。プチッといって落ちました

これは慌てました。えええ、ここで落ちるのか。ぜんぜん兆候なかったのに。

落ちたPCに、こわごわ電源を再投入。こういう時って、ほんと恐怖です。もしダメならマザボのリセットとかプラグの緩み確認とか、それでもダメなら原因がCPUなのかマザボなのかHDD(SSD)なのか、特定しなければならない。そして可能性のありそうな部分の手当て。要するに交換、購入。気が遠くなります。

よかった・・無事、セーフモード選択画面が立ち上がった。念のためセーフモードでいったん立ち上げて、とくに問題ないことを確認して再起動。

無事に通ってくれた。いったい原因は何なのか、管理画面のイベントビューワーで確認。うん、もちろんエラーがズラズラズラッと並んでますが、いちばん最初はMicrosoftのSecurity Client。無料セキュリティツールであるMSEが原因みたいな雰囲気です。

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セッション "Microsoft Security Client OOBE" が次のエラーで停止しました: 0xC000000D


何のこっちゃ。

ネットで調べてみました。便利な世の中です。100パーセント解決は無理ですが、ある程度はネットで調べがつきます。それによると何か根本原因かはともかく、セーフモードでProgramDataの下のEppOobe.etlという代物を削除しろとある。これって、不要なファイルなのかな。

念のため、まずMSEを削除して再インストールしてみます。これでは変化なし。あいかわらずエラーで出ます。で、ちょっと不安ながらエラーを吐き出すファイルを処理。
C:\ProgramData\Microsoft\Microsoft Security Client\Support\EppOobe.etl
をリネームして除外する。

適中だったらしくこれでエラーが消えました。ただし印刷スプーラー関係のエラーだけはあいかわらず出ています。

印刷スプーラーは、プリンター Canon LBP*** を共有リソース名 Canon LBP*** で共有できませんでした。エラー: 2114。ネットワーク上の他のユーザーはそのプリンターを使用できません。

調べてみると、こっちはたいした問題ではないらしい。印刷データを溜め込んでおく仕組みが、電源投入時に素早く反応しなかったのが理由でしょう。気にする必要なし。


シャットダウンの根本原因がこれで本当に解決したどうかは不明。でも、そう思い込むことにします。よかったよかった。薄氷の上の安心


★★ 角川文庫
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たぶん、未読。図書館の閉架にあることがわかったのでリクエストしました。

海音寺潮五郎としては、ほさどの小説ではないようです。お決まりのクグツが登場して、そこにペルシャから逃げ込んだ美姫がからむ。忠実な異国の戦士(ほとんど超人)とか、賢い猛犬とか、すばしこく走り回る少年とか、オールスターです。

期待した執権時宗の登場シーンは非常に少ない。時宗という人、偉人なのか凡人なのか、そのへんが疑問だったのですか、あまり解答らしいものはなかったです。相模太郎胆甕の如しと頼山陽は持ち上げていますが、はて、何をして豪胆といったのか。元の使者を斬ったから胆があるということなんでしょうか。

ということで、九州から訴訟で上った若い武士が最初の主役で、悪役として西園寺ナニガシという公家が登場する。この公家にはお決まり、妹の美しい姫がいて、もちろん武士と妹は惹かれあう。

京から鎌倉に舞台が移って顔を出すのは伊予の御家人河野通有。これは史実でもけっこう有名な武士らしいです。中世ふうの気骨と生きざま貫こうとする武将。四国に河野水軍ってのがありましたね。

そしてここでも悪役がいて、これは北条一族赤橋家の弟のナニガシ。海音寺さんらしいのは、西園寺ナニガシにしても赤橋ナニガシにしても、悪いやつだけど知恵はあるし弱虫ではない。西園寺ナニガシは楽器を手にすれば名手だし、赤橋ナニガシも一応の武将ではある。そういえば「平将門」でも仇役の平貞盛とか俵藤太秀郷、魅力的でした。

ただ、彼らは往々にして心根が清々しくない。汚いのは海音寺さん、大嫌いらしいです。

蛇足ながら、池波正太郎がなかなか直木賞をとれなかったのは海音寺潮五郎が猛反対したからということになっています。たしか「卑しいところがある」と言ったような気がしていましたが、ネットで探してもその言葉は発見できず。そこまできついことは言っていなかったのかな。


★★ 集英社文庫
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本棚で発見。子供が買ったんだろうな、きっと。

軽いタッチのファンタジーです。そこそこ楽しめます。

これ、「鹿男あをによし」の作者なんですね。本は読んでませんが、ドラマはけっこう笑えた。初めて多部未華子という若い女優さんを見て、美人なのか不細工なのか不明だけど目が強くて印象に残る女の子だなあと思っていたら、あっというまに売れっ子になった。当時からもう売れていたのかな。

で、しゅららぼん。しゅららぼんとは何か・・・というのがテーマなので、これを種明かしするわけにはいきません。ま、琵琶湖の東岸に異能をもつ一族がいて、富と権力をきづいている。なにしろ相手の心を支配して、言うこときかせる力があるんだから、金持ちになって当然です。

しかし超能力にはそれなりのマイナス面もあり、新米の少年がいろいろ苦労する。そうそう、この一族のキャラクターがみんな素晴らしいです。美人はいない。冷酷無比な男もいない。みんな、ちょっとドジで、ちょっと笑える。

ま、そういう本でした。

★★★ 河出文庫
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これも中村文則。わりあい新しい本のようです。

けっこう楽しめる本です。ハードボイルドふうのタッチで、孤独なスリ稼業の男を描く。信条として金持ちからしか盗らない。人差指と中指の芸術。しょっちゅう指を湿らせるために専用のハンカチも持っている。このへんは深いです。

ハードボイルドの宿命として、よせばいいのに近所の惨めな母子に注目してしまう。母はクスリに漬かった売春婦。子供はまだ幼い。典型的なパターンで、子供は放置されて汚くてしょっちゅう殴られている。母親に指令されてスーパーで稚拙な万引をしている。豚肉300gとタマネギとか、万引きリストを持ってスーパーをうろうしている。これじゃすぐつかまるのは目に見えている。

で、きまぐれな交流。子供はスリ男の手練をみて、英雄のように憧れる。自分もそういう男になりたい。このへんはちょっと泣ける部分です。

このままスリ男が美学つらぬいてかっこよく暮らしていければそれもまた悪くないんですが、ま、小説ですからお決まりで、破滅に向かう。ん、本当に破滅なのかな。それともまだ希望は残っているのか。そのへんを微妙に結末となっていきます。

いい本でした。

★★ 河出文庫
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本棚から発見。

新人賞(新潮だったか)の受賞作だそうです。納得。いかにも新人賞ふうの小説です。

ある学生が拳銃を手に入れる。もうそこからストーリーは想像できます。で、展開も想像通り。主人公がちょっと異邦人のムルソーふうですね。なにか人格に欠落したものがある。

その欠落は、彼が付き合った女たちの反応から類推できます。おそらく外見はノーマルで、けっこうイケメンで、でも一夜をともにすると、なんか異常さがある。欠けたものがある。ただ、どうして女たちがそうした反応をするのか、主人公にはわからない。わかろうともしない。

けっこう達者な小説でした。

★★ 講談社
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本棚の奥から発見。やけに分厚い文庫で、これ、読んだ記憶がないです。でも半村良なんて家内も娘も買うわけがないので、やっぱり自分が購入したんでしょうか

ということで通読してみました。

謎の僧が謎の理由で赤子を捨てる。まだ幼い娘が通りかかって拾い上げ、自分が育てると主張する。やがて娘は賢く美しく成長。小さな村の長の娘です。長という表現は違うなあ、えーと、ちょっとした豪族というべきかな。やがて娘は周囲の支持を得て、共同体の指導者になる。

で、近隣の国が攻め込んでくる。隣村と同盟を組む。山の民が助けにくる。詳細は違いますが、そんなふうにいろいろあって合同合併、胡桃の国が誕生。大きくなって扇の国になる

そうした女神伝説のストーリーかと思っていました。女神のおかげで戦のない平和な国を目指していく。それにしても甘っちょろくて、半村さんとしてはあまり上出来の小説ではありません。

・・・と思っていたら、後半になって風呂敷が一気に拡がる。いきなり全国区になり、悪鬼やら古代神やらわらわら出てきて大騒ぎ。えーと、産霊山秘録だったか妖星伝だったか、那須野ケ原あたりを戦場にして巨大な諸仏が戦うようなシーンがありました。あれをバカバカしいほど誇大化した感じです。

後書きで弟子(ということになっている)清水義範が、やけに師匠を持ち上げていますが、はて、そうかなあ。どっちかというと駄作。おまけに未刊だし。風呂敷を拡げすぎて収拾がつかなくなった

あ、念のため。半村良はかなり好きです。初期の水商売ものも良かったし、晩年の鰹節商売の話(すべて辛抱)も好著だったと思います。


★★★★ 岩波文庫
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この人の著書は初めてです。なんか民俗学では知られた人らしいですね。知らんかった。

戦前から戦後、主として西日本の農村での聞き書きです。戦後といっても浅くて、たぶん昭和25年あたり。日本が大きく変容する前の時代です。偉い柳田國男とはまた違って、もっと農民に寄り添って話を聞いている。話し手も知識階級ではなく、庶民、常民。たいていは読み書きもできない人たちです。

文章が非常に良質です。たぶんメモなんかしないでひたすら話を聞き、あとで再構成したものなんでしょう。宮本常一という人を濾過して書き出された古い農民の日常の暮らしや生活。

地主とか村役人とか、命令系統によって構成された社会ではない。ある意味、全員が平等。全員に発言権がある。著者は西日本と東日本ではシステムが異なっているのではないかと示唆していますが、うん、それももっともらしい。西日本では大きな地主のいない均質な村民集団が多かったという。

いろいろな老人が登場します。博労として生きて乞食になった老人の語る色遍歴「土佐源氏」はもちろん良かったですが、それよりも最初のほうに出てくる村の寄り合いが面白かった。

何かテーマがあると集まって、2日でも3日でも話しあう。論議するんじゃなくて、ひたすらダラダラと、話も飛び飛びに話すんですね。話しているうちに、効率は悪いようでも時間をかければ、決めるべき大切なことなら自然に結論らしきもの出る。そうやって決まったことには、誰も異議をはさまない。指示されたわけではなくみんな自分たちで決めたことです。

非常に楽しめる本でした。また機会があったら他のものも読んでみようと思います。

天気予報の時間、南方に台風がいくつも発生しているとかいうニュース。で、どうでもいいことですが、ふと台風の雲に隠れたあの大きな島はどこなんだ?と疑問をいだきました。位置関係からするとフィリピンですが、フィリピンって、あんなに大きかったっけ

スマトラとかボルネオなんかが大きいのは承知ですが、ちょっと違うような。やっぱりフィリピンの島々かな。撮影している衛星の位置関係か、北の日本がやけに小さく見える。

気になって、調べてみました。なるほど、ルソン島ってのはだいたい日本の本州の半分くらい。ミンダナオ島はそれより少し小さい。でも北海道よりは大きいです。で、フィリピン全土の面積は日本の80%くらいになる。人口も9000万を越えていて、世界12位らいしです。もっと豊かになっても不思議はない国です。

それで思い出したのが先日のポーランドボールに描かれたフィリピンでした。

ときどき眺めているポーランドボール、面白いものもあるし、理解至難のものもあります。クォリティもピンキリです。で、先日見たテーマは「どうしてフィリピンボールはいつもハッピーなのか」というもの。これがなかなか深かった。

鬱になって(セップクを考えて)いるニッポンくんが、能天気なフィリピンくんを見て「何故?」と聞きます。するとフィリピンボールは楽しそうに独白。うん、そりゃ台風とか汚職、貧乏、分離主義、ドラッグ、貧困、チャイナ、アメリカ・・・たくさんの苦痛や悲しみがあったんだよ。ずーっと泣いて泣いて暮らしてたんだけどね。でももう涙はすべて枯れはてちゃった。つまり全ての悲しみが枯竭。幸せ以外のすべてがね・・・だからもうボクには幸せになる以外に選択肢がないのさ・・・」

こうして説明しても、ちっとも笑えませんね。キャラクターを丸いボール形にして、目の形と位置だけで表現してるんですが、実際のマンガを見てるとつい感情移入してしまう。たかが線描きの目、いろんな感情が出るんですね。ま、マンガを説明するってのが、そもそもヤボか。


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目だけで表情は変化します
★★★ 早川書房
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カズオイシグロは初読。名前だけは知っていましたが、本棚に積んであったのを家人に勧められて手にとってみました。

なるほど。時代は第二次大戦前後、古き良き英国のお話ですね。ただ何が「古き良き」なのかというと、ちょっと難しい。見方を変えれば陳腐で鼻持ちならない貴族趣味というか、大きな貴族館の主人とその忠実な執事のお話です。

訳文に雰囲気あります。まるでビクトリア朝かと思わせるような古くさい言い回しを、そんなに気にならないように訳してくれている。土屋政雄という訳者ですか。ためしに検索してみたら「コールドマウンテン」の訳もこの人でした。記憶はおぼろですが雰囲気ある小説だったような。南北戦争あたりの南部が舞台だったかな。

で、「日の名残り」。主人公はドラマや映画で描かれる「典型的な英国の執事」を体現したような男です。常に執事としての品格を大切にし、主人のために尽くし、それをプライドに生きてきた。しかし自分の人生も残り少なくなってから、ふと微かな疑問をいだき始める。これでよかったのだろうか。そうした思い出の折節に、なんとなく自分に好意を寄せていたような気のする女中頭の記憶が浮かびあがる。女中頭は戦争前、結婚のために退職し、その結婚も決して幸せではないような雰囲気でした。

ということで館の持ち主も変わった戦後のある日、執事はご米国人の主人の車を貸してもらって、その元女中頭が暮らす町へと道をたどります。あくまでタテマエは「彼女に会って、元の仕事に復帰してくれないか頼んでみる」という用件です。ただ明確に言及されていませんが、彼女は執事を暖かく歓迎してくれて、ひょっとしたらもっと密接な関係になるかもしれない。そんなうっすらとした期待感が漂います。

ただ、自分はむしろ逆に読んでいました。女中頭に会えても、非難されるんじゃないか。あの時の私の気持ちを受け入れてくれなかったじゃないの!と難詰される。執事ってのが、仕事一筋、かなり無理して非人間的に生きてきた人ですから。

実際の小説の結末はちょっと意外でした。なるほど、そういう形にしたのか。それはそれで悪くはない。現実の人生はけっしてドラマチックなものではない。ひたすら平凡、なにもない。何も起きない。

数ページずつ読んできたため、読了までずいぶん時間がかかってしまいました。ま、そういうふうに読むのも悪くはない本です。

★★ 集英社
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再読。たぶん、前は★★★にした思います。

日をおいて読み返しても評価の下がらない本もあるし、下がる本もある。「朱鳥の陵」の場合は、初回が仮に85点とすると、次は70点くらいに落ちた感じです。なんとも言えぬドロドロした濃密な霧が晴れて、ストーリーが明確になると、スッキリ分かりやすくなった分だけコクが薄らぐ。ま、そんな感じでしょうか。

主役(でしょうね)の太上天皇(おおきすめらみこと)の思考経路や行動の意味がわかってくる。その代わりに古代のおどろおどろしさが消える。再読して損したとは思いませんが、しいて読まなくても良かったかな。


★★★ 出版芸術
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こんな選集が刊行されていたんですね。知りませんでしたが皆川博子ってのは膨大な数の小説を書いていて、しかも絶版が多いらしい。面白い作家と思うのですが、あんまり売れないと評価されているのか。それとも単に不遇なのか。

で、この選集6。「鶴屋南北冥府巡」と「二人阿国」。他にも数本の短編が選ばれています。

「鶴屋南北冥府巡」はタイトル通り、鶴屋南北が主人公。東海道四谷怪談が南北ですね。名前だけは有名ですが、どういう人物なのかはあまり知られていません。デビューするまでの人生はほとんど未詳らしいです。えーと、立作者になったのは39歳か。遅咲き。

で、野心に燃える若いころの南北と、南北がほれ込んだ初代尾上松助という役者の絡まりが内容です。当時の役者、ほとんどが若い頃は色子だった。色子ってのは陰間です。色を売る若者。色子として身を売りながら贔屓をつかんだり、芸を磨いたり。役者同士、先輩後輩の男色関係も常識だった。

で、この二人、いろいろ世間をしくじって大阪へ逃げる。その大阪での逼塞生活が「冥府巡」です。悲惨というかデガダンの極というか、めちゃくちゃ。このあたりの描写が皆川博子の真骨頂。

「二人阿国」は本物の阿国と、それに対抗する遊女歌舞伎の若い踊り手。出雲の阿国vs佐渡島阿国。出雲の阿国そのものが非常に資料に乏しいらしいです。だから有吉佐和子の「出雲の阿国」もあるし、皆川博子の「二人阿国」も成立する。当時の踊り子と遊女の境遇とか、なかなか雰囲気のある小説でした。


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