Book.03_1の最近のブログ記事

文藝春秋 ★★


sakaiya-hide.jpgま、よくも悪しくも堺屋太一の太閤記です。

それなりに3巻を読了はしましたが、さして感銘もなし。といって後悔するほどでもなし。

若い頃の浮浪仲間「がんまく」という男。同じような環境から生長した二人が、ひとりは太閤になり、ひとりは世直し運動家の石川五右衛門になるというのが新しい解釈ですが、でもねー。

「夢を越える」というのは、先達だった信長を追い越してしまったという意味です。信長が目標だったうちは簡単でよかったけど、信長の夢を越えてしまったところで指針がなくなる。あとは迷える男・秀吉の混迷というわけです。


至誠堂 ★★


james.jpgせっかく3巻4巻を読んだので、ついでに巻1巻2も読み直してみました。

この前に読んだのは1年前だったか、2年前だったか。その頃は感情移入できなかった沼地の一族(ターロック一家だったかな)が、妙に面白いです。先天的な放浪者の家系、こすっからい盗人、文盲。その一族から初めて文字を読み書きできる少年が育ち、奴隷船の船長となる。あるときは奴隷船で金稼ぎ、あるときは愛国的な私略船の船長。そしてあるときはロマンチックで酷薄な色男。

それにしてもミッチェナー、年齢のせいか力量が落ちてますね。アネクドート展開の混乱がけっこう目立ちました。


小学館 ★★


morimura-h.jpg巻1の副題は「新星 平清盛」巻2が「驕れる平氏」。清盛の誕生から保元・平治の乱、一門の躍進、小松殿(重盛)の死あたりまでです。

ちょっと真面目になりますが、このテの本を読むといつも思うのが「権力」というヌエの正体。たとえば院政。天皇ではなく上皇がなぜ実権を持つことができたのか、あるいは上皇・法皇(この場合は後白河)の権力を奪って天皇が実権を回復するとは、具体的にどういうことなのか。人間同士の、単なる性格的な力関係なのか、たとえば味方となった公家たちの数や財力なども多少は影響しているのか。

例えば摂関を独占していた藤原の主流にとって、実権が天皇から上皇に移るというのは致命的なことです。あくまで摂政関白とは、天皇制に依存しているわけですから。天皇(つまりは摂関)を無視して、どこかの院で政治を行われてはたまらない。でも、そうなってしまった。

ついでに言えば「政治を行う」とは、天皇なり上皇なり命令を下すということです。天皇なら詔勅とか宣旨。院庁なら院宣かな。あくまでシステム上は「天皇の代理である上皇・法皇の命令」という形だったはずです。で、上皇や法王に権威があって天皇側が弱体なら問題ないけど、たまたま意欲的な天皇が登場すると話がややこしい。それがまぁ保元の乱ということになるんでしょうね。

時代は違うけど、秀吉が蒲生氏郷の死後、会津ン十万石を改易しようとした際も、実権を持たないはずの関白秀次が秀吉の命令書に印を押さなかったという事件があった。ま、いろいろ事情はあったんでしょうが、たとえ実権がなくてもシステム的には関白のハンコがないと実効性を持たなかったわけです。もちろん、太閤に逆らった代償は破滅でしかありませんでしたが。

そうそう、この平家物語。ま、いかにも森村調の歴史モノです。好きな人もいるんでしょうけど。


至誠堂 ★★


james.jpgg去年だったか巻1~2を読んだ。しかし何故か図書館には巻3~4がなく、それっきりだったのだが、先週またフラリと出掛けたら新着図書の棚に2冊並んでいた。もちろん即効ゲット。まだ一人か二人しか読んでいない雰囲気で、新しい。

内容は例によってのミッチェナーふう展開で、アメリカはチェサピーク湾を主題とした数百年の物語。チェサピークって、さすがに名前は知っていたが、たぶんワシントンとかニューヨークとかあっちの方だろう程度のおぼろげなもの。ようやく勉強できました。

ボルティモアとかフィアデルフィア、アナポリスとかサスケノハナ川とか、こういう位置関係だったんだ。おまけにペンシルバニア、メリーランド、バージニアなんかの配置も初めて詳細に知ることが出来た。なるほどねー。なんとくノッペリした海岸にこうした州が南北にズラーッと並んでいるような印象だったが、まったく違って複雑に入り組んでいる。

で、チェサピーク湾。調べてみたら平均の水深が7メートル。広さは瀬戸内海の5分の3強。浅くて、でかいです。湾の中央には旧サスケノハナ川の跡が残っているため、ここだけは水深があり、喫水の深い船でも通れるようです。

主な登場人物(というか家系)は農園主、造船業のクェーカー教徒、這い上がろうとする黒人。それにプラスして湿地帯にはびこっている貧乏白人たちがいて、これが魅力的。無学、偏見、頑固、狡賢い、強靱という家系(パタモーク一家?)で、好きなのは黒人いじめと雁猟。どうしようもない、典型的なアメリカの困ったプアーホワイト。しかも素晴らしい享楽的な連中。味があります。


筑摩書房 ★★


oooka.jpg大岡さんの本では「レイテ戦記」が好きで、ただ好きといってもなんせあの大部かつ詳細なものなので、通して読んだのは二回程度か。今回は未読の「将門記」を読もうと思って、わざわざ全集の1巻を借り出した。

収穫は、当時の坂東の地形を知ったこと。特に利根川、鬼怒川あたりの流れが現在とはまったく違っていたらしい(特に家康の時代でガラリと変貌した)。開墾しにくい湿地の領主であった将門と、既にひらけていた土地を支配していた伯父叔父たちとの確執。新旧の対立というふうにも考えられるとのこと。なるほどねー。

「将門記」は比較的短いのでサラッと読み終えたが、その後で大部の「天誅組」に取りかかろうと思いながら、こっちは挫折した。ま、また読む機会もあるでしょう。

こういう全集、全巻揃えておきたいなー。置く場所もないけど。


文藝春秋 ★★★★

saru.jpg 多分妻が読みかけだったらしく、机の上に置いてあったのでサラッと通読。

サル学はニホンザルを持っていた日本が世界をリードした珍しい分野で、多くの日本の人がボスザルと離れザルの関係とか、芋洗い文化の伝播など、けっこう知識を持っている。これって、かなり特殊なことらしい。多くの西欧人の場合は、サルに文化なんてあってたまるか、というこだわりから簡単に抜けられないとのこと。

改めて確認したこと。
・ボスザルが群を支配・統率しているというのは神話にすぎない
・メスはけっこう自由で強い。特にハバザルは力を持つ
・群の構造や関係は、ニホンザル、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、マントヒヒ・・・すべて異なる。「サル一般」というような文化構造はない。

そういえば、ついこないだ、人間とチンパンジーはDNAから見ると非常に近縁であるという新聞記事を読んだ。人間をチンパンジーの亜種に入れるか、あるいはチンパンジーを人間の仲間に入れるか、どっちに分類し直したほうがいいかも・・という研究発表だった。

キリスト教社会からはものすごい反発がくるだろうなー。


小学館 ★★★


maison.jpgいろんな版が刊行されているらしいけど、多分、小学館コミックスの巻1~5。何故か5巻までしか買ってない。その続きがあるらしいことも長い間知らなかった。

で、寝る前に読み始めて、5巻をほぼ1週間でちょうど読了。読了という言葉を使うのもすこし変かな。読み返すのは何回目になるか覚えてないですが、相変わらず面白いです。サブキャラクターが全員生きている。ある程度以上の年配にとっても懐かしすぎる事物にあふれている。

今回読んで、これまで記憶違いをしていたことを発見しました。私、アケミちゃんの名前はてっきり「二宮アケミ」だと信じていた。当然、住んでいるのは2号室のはずです。それなのに何故五代の5号室から穴があけられるのか、不審に感じてはいたのですが・・。

彼女は六本木朱美、6号室というのが正解だったようです。じゃ、2号室には誰が入るのか。空き家になってるわけだけど。これもまた不思議なのでネットで調べてみたら、二階堂(五代のニキビ面の友人? ん?あれは坂本だっけ)が入る予定らしい。また私は未見だが八神いぶきという女も来ることになってるらしい。

それにしても3号室って、どこにあるんだろ。


光文社 ★★


sangoku.jpg前に同じ三好さんの興亡三国志(たしか文庫で全5巻)の2巻まで読んだ。通して読むつもりで1~3巻まとめて買ったのだが、なぜか第2巻がダブっていた。買いなおすのもナニで、ここで挫折。

オーソドックスな構成の三国志と違い、この外伝はオムニバス構成となっている。本編ではゴチャゴチャ登場して、あっさり消えてしまう名将・参謀・論客などなどを一人ずつ主人公として取り上げている。全部で16人かな。

従って、この外伝では劉備も曹操も関羽も前面には出てこない。彼らの下で一瞬の輝きを得たり、失意のうちに首を刎ねられたり、賢く立ち回ろうとして失敗したり、・・という人間臭さがなんともいい。だいたい劉備が死んでからのことなんて、普通の三国志じゃあまり語られていないもんね。

という具合で意外に面白くはあったが、でも三好さんが書いてもこんなものなのかなーという失望はある。かなり達者な作家でも、このテの歴史ものを題材にすると、なぜか平凡な小説になりがち。題材や登場人物があまりに強烈すぎるのかな。腐るほどあるマリー・アントワネットものなんかもそうですね。


原書房 ★★


bunkashi.jpgアーサー王伝説なんか読んだので、このへんにも興味を持ってしまった。ケルト人ってのはよく目にし、耳にする言葉でありながら、いまいち明快じゃない。要するに、よくは知らない。

なんだかんだと読んだ結果、理解できたのはガリア戦記なんかに登場する「ガリア人」やら「ゲルマン人」やら、すべてひっくるめて「ケルト人」と称しても間違いじゃないらしいということ。北西ヨーロッパで暮らしていた先住民族はみーんなケルト。人身御供をやったり、ドルイドがいたり。裸で戦ったり。

故にアーサー王ってのはブリテン島にいた先住のケルト系集団の王様(あるいは武将)。ケルト系ってのはどんどん圧迫されて、最後はウェールズ(たぶん)とかアイルランドにしか残らなくなってしまったらしい。

写真図版のいっぱい入った本だったけど、角付きの兜をかぶって縄帯一本、あとはスッポンポンで戦斧(多分。斧そのものは消失)を振りかざしている像、有名なものらしいが、実に躍動感がある。こういう野性的でおおらかで、ちょっとヌケた民族が、狡猾なローマに征服されてしまうってのは当然の成り行きなんだろうな。

ガリア征服の発端となったスイスあたりのガリアの一部族移動も、彼らとしては平和的な通り抜けのつもりだが、野心あふれる執政官(だったかな)カエザルにとっては絶好のチャンス。「ならずもの部族の移動だ!」てんで嫌がるのを無理やりやっつけて、それでカエサルの財布もふくらんだし、ローマ帝国も拡大できたし、西ヨーロッパも文化国家になれた。


原書房★★


rakujitsu.jpg副題は「真実のアーサー王の物語」

サトクリフという人、アーサー王あたりをよく書いている人らしい。ただこの「落日の剣」はファンタジーというより、一種の想像歴史小説のような雰囲気を持っている。

したがって白く輝く鎧も貴重な名剣も登場しない。最強の騎士軍団とか称しても、せいぜい数百騎程度。主人公もアーサーではなく、山賊の親分みたいな熊のアルトスだし、宮廷も質素でボロ屋。食い物もまずい。要するに西ローマ帝国が滅びたあと、海を越えて侵攻するサクソンや北の高地からのピクト反攻に苦しむ5~6世紀のブリテン島の実情を、かなり正確に描いたものらしい。

これまでなんとなく「アーサー王」ってのはサクソン人かと思っていた。ま、フィクションであるアーサー王の雰囲気は多分9世紀とか10世紀あたりからとってるんだろうから、それならサクソン人ふうであっても当然だわな。あ、史実としてのアーサー王のモデルはブリトン人(ケルト系)だそうです。

ちなみに時代がくだってノルマン王朝(プランタジネット)になってからの獅子心王リチャードの12世紀末が、スコット描く「アイバンホー」になるわけで、ここではもうサクソンが被征服民族になってしまっている。ロビン・フッドの活躍も一応この頃。子供のころに読んで、「ブタ」はサクソン語だけど「ブタ肉」はノルマン語、という説明が面白かった記憶がある。サクソンが育て、ノルマンは奪って食べるのね。

ま、けっこう、読める本でした。ただし血沸き肉踊るカタルシスはありません。神話的ではあるものの、ひたすらリアリスティック。悲惨で辛い内容です。


新潮日本文学 ★★★


shishi.jpg何かの拍子で獅子文六の「大番」が読みたくなった。ところが探してみて驚愕。獅子さんの本なんて皆無なのだ。どうやら版元にもほとんど在庫はないみたい。

ひどい時代だなー。獅子文六、石坂洋次郎、大仏次郎・・。こういう本はきれいサッパリ消えている。あの井上靖だってほぼ全滅。しろばんばシリーズと西域ものが少し残ってるくらいだ。

というわけで図書館で探したらようやく文学全集で獅子さんの本が発見できた。内容は「父の乳」と「娘と私」。読み返してみると、もちろん面白いです。とんとん読んでしまう。

今回の発見としては、再婚当時の獅子さんが「中落ち」とか「中だるみ」という一種の性欲減退症候群に陥っていたらしいこと。昔読んだ記憶ではたまたま獅子さん夫婦が寝室を別にしていたため、ついつい不精して奥さんを放置してしまったような印象だったのだが、そうではなかったらしい。なんせ確かめるためわざわざ女を買いに行ってみたが、やっぱりダメだったというのだから。

ただ、この奥さんが亡くなってから三回目の奥さんとの間には息子さんができたらしい。60歳での長男誕生。溺愛していたという。


扶桑社ミステリー★★★


longwalk.jpgリチャード・バックマン名義で書かれた、キング初期の作品。

ストーリーは単純です。近未来のアメリカ。貧しく全体主義的な社会のようです。そして爽やかな5月、選ばれた100人の少年たちが一斉に歩きだします。落伍すれば犬のように銃殺。99人を振り捨てて最後の一人になった少年だけが栄誉と巨額の賞金を獲得します。

雰囲気は「スタンド・バイ・ミー」にも少し似ていますね。ただし、少年たちのいかにも少年らしい会話とか、友情、憎悪、感情の衝突のすぐ背後には容赦ない死が待ち受けていることだけが違うけど。

それにしても気になるのはこのレースの制限速度。時速4マイルを下回ると警告です。警告は3回までで、4回目は銃殺。ただし警告なしで1時間歩き続けることができれば切符が一枚減るというルールです。

で、この4マイルという数字が私にはけっこうひっかかりました。時速に換算すると6.4キロで、かなり速い。確か旧日本軍の行軍速度は時速4キロだったと思います。これで1日8時間歩いて約30キロ。

時速4キロというのは、決して早足ではなく、決して遅くもなく、しかし着実に歩いているときの速度です。時速6.4キロだとかなり早足。スタスタと歩くという感覚でしょうか。何時間もこのペースを維持するのはかなり辛いです。ましてモノを食べたり、飲んだり、話をしたり、後ろ歩きしながら放尿したり、半分トロトロと眠ったりしながらでは至難。

時速5キロが「忘れ物に気づいて取りに帰る速さ」という表現もどこかで読んだ記憶があります。アメリカの少年たちは足が丈夫なのかなぁ。


集英社 ★★


dosukoi.jpg深夜、どすどすと異様な地響きが江戸八百八町にとどろきわたり・・・と始まって、最後もまた怪音で終了。全編これぶくぶく肥満のアンコ力士たちと呪いとこじつけがましい解明、破天荒ミステリーが相撲取りならぬ尻取りふうに連綿と続きます。キーワードは「肥満」

京極夏彦の本、読むのはこれが最初。最初というのは不幸な巡り合いだったかな。それとも他の本も同じようなものなんだろうか。

完全に遊びまくった連鎖短編集ではありますが、文章は達者なひとですね。あまりと言えばあんまりな・・と思いつつ、結局最後まで読んでしまいました。京極夏彦の他の本を見つけたら、はて読むかどうかは微妙。


世界文化社 ★★★


shingan.jpg小林秀雄なんて、教科書で読んだっきり。なま女房が深夜に鼓を打ってなんとか・・という代物でしたか。以来、手にとってみたこともない。いかにも偉そうで敬遠してました。

世界文化社の本ですから、写真がけっこう入っています。骨董とか絵とか書とか。小林秀雄が愛したという青磁やらなんやら、一見しただけではは少しも良さそうに見えないですね。やはり世界が違う。レベルが違う。

いろんなエッセイやら評論やらを収録していますが、中でも青山二郎との仲間うち対談は違った意味で面白かった。ほとんど意味不明。酔っぱらった友人同士がヘロヘロでしゃべっているような内容。でも当時の信者にとっては含蓄だらけの素晴らしい高踏対談だったんだろうなー。

ザーッと(それでも小林秀雄ですから、時間はかかる) 読んでみました。ザーッと読んではいけない本だということは理解できました。一行一行、テニオハの一つ一つに味がある。重いとでもいうか、じっくり舌の上で転がして味わわなくてはいけない文章ですね。濃厚な抹茶です。

「平家物語」の評を読んで、なんか平家をじっくり読みたくなりました。文庫で探して第一巻だけでも買ってみるかな。以前は荒唐無稽の太平記に興味があったけど、今度は平家。老後の楽しみになるかもしれない。


早川書房 ★★★★


7king.jpg「氷と炎の歌」と題したファンタジーシリーズの第一巻。「七王国の玉座」の原題はA GAME OF THRONES

表紙は女子高生むけみたいで超ひどいけど、中身はいいです。久しぶりに面白い本を読んだ充実感があります。ローカス賞受賞作。しかし、しかしそれにして装丁は内容と乖離して悲惨だなー。写真は上巻ですが、下巻に至っては乳房もあらわなな女王かなんかの絵で、これだけで潜在読者の7割くらいは逃がしてる。恥ずかしくて電車の中で読むにはかなり勇気がいります。最近の早川書房って何を考えてるんだろ。

舞台は中世のブリテン島を思わせる封建の世。ハドリアヌス防壁を連想させる巨大な氷の壁の北は異形人が彷徨しているし、海を隔てた荒野にはフン族みたいな弁髪の騎馬民族が荒し回っている。で、大狼や黒牡鹿、金獅子などを紋章とする誉れ高い大貴族たち及び一族が激しく争い、騙しあい、陰謀渦巻き、王位を狙う・・・。

登場人物はやたら多いです。最初のうちは誰と誰がどういう関係なのか、間違いなく混乱します。でも50ページくらい読んでるうちに、だんだん筋が見えてくる。

極悪非道の騎士、魅惑の悪騎士、愚かで頑固な騎士、知恵だけが武器の高貴な血筋の侏儒。子供たちもたくさん登場します。健気な王子、たくましい少女。愚かな美少女。素晴らしいのは、人間が決して類型的ではないということでしょうか。細部がよく書かれていて、魅力あるキャラクターが多く、感情移入しやすい。

ファンタジーというより極上質のSF、あるいは充実した歴史文学の雰囲気すらあると言えるかもしれません。そうそう、一言唱えれば火炎がほとぼしるような便宜主義魔法はほとんど出てきません。ただ皆無というわけではなく、最後の方でほんの少しだけなら、ありますが。

続編(巻2: A Clash of Kings、巻3: A Storm of Swords)を早く読んでみたいけど、どうせ刊行は時間がかかるんだろうなー。作者は全6巻の予定だそうです。

追記:
装丁は目黒詔子という人だった。こういうタイプの絵をかく人に依頼した早川書房が悪い。どういう読者層を想定してるんだろ。

追々記:
この本、どう形容したらいいのかなー。コニー・ウィリスの「ドームズディ・ブック」ほどは叙情的でなく、ダン・シモンズの「エンディミオン」シリーズよりは妙な偏愛がなく、ヒロイックでもなく、SFチックでなく、マイクル・クライトンの「タイムライン」よりは人物が描けていて真実味がある。そんな書にル・グィンの「ゲド戦記」の味をちょっと振りかけ、ウォルター・スコットの「アイバンホー」も混ぜこんだような・・・。説明しきれませんね。


新潮文庫 ★★★


hanibal.jpg読まないつもりだったのに、読んでしまった。読んでしまえば、もちろんそれなりに面白い。

興味を引かれたもの=レクター博士の記憶の宮殿 / メイスンのマッチョ妹 / フィレンツェの伊達男警部
興味を引かれなかったもの=レクター博士の妹の思い出 / シシリアの豚飼い男 / フィレンツェの名所の数々 / レクター博士の講演
/ 南米でのレクター&クラリスたちの行状 / 老いたクロフォード

記憶の宮殿ってのは、イメージいいですね。実際、こういう記憶術があるということですが。通常の人の場合は引き出しのたくさんあるデスクとか、ロッカーだらけの書斎とかを思い浮かべるということです。レクター博士になると、それが壮麗な宮殿になってしまう。ま、楽しめました。


文芸社 ★

his-ogai.jpg 「高瀬舟」「興津彌五右衛門の遺書」など鴎外の歴史ものの背景を探ろうという試み。かなり拘って、人物や事物を探求しようとしている。

ただ、読み終わって感じたのは、作者が決してプロではなく、やはり市井の研究者(高校の先生らしい)なんだなあということ。もちろん凄い量の資料を読んでいるし、各地を熱心に研究もしている。しかし読んでいて、何か物足りない。所々に素人臭さ(考え方にしろ、知識にしろ認識にしろ) が伺える。突っ込み方も単純に見える。

アマチュアとプロ作家や研究者にはこんなに違いがあるものか、とも思ったが、あるいは「怪しい部分はうまくトウカイし誤魔化すテクニック」を持っているのがプロというものなのかも知れない。(とうかい が変換されなかった・・)

ま、鴎外がどんな資料をタネ本にして小説を書いていたのかが分かるだけでも、読んだ価値はありました。子供のころに読んだ伝記小説にはちょっと載っていたかもしれないけど、乃木夫妻の自決の詳細状況なども、私にとってはほとんど初見。そうか、腹を切った後にいったん裾をたくしこんで、それから軍刀の柄を足に挟んで首を突いたのか・・。


文芸春秋 ★


kuzukago.jpg戦前から戦後にかけての、怪物・菊地寛の連載エッセー(と言うべきなのかどうか・・・)。

あまり文章のうまい人じゃないなー。ただ、物事の本質を見抜く目のある人だったらしい。少なくとも文学至上とか、芸術至上という曇りにはまったく縁がない。

社長である菊地が文藝春秋に書き綴った雑文を集めたものだが、この文章が当時はそんなに評判が良かったんだろうか。ま、論点が常にはっきりしてはいるし、見方も妙にスッキリして、それなりに合理的であることは事実。好悪は分かれるところだろうなー。


集英社 ★★


space.jpg図書館でミッチェナーを検索かけたら、閉架分でこれが見つかった。既読かどうか自信がなかったが、記憶にないくらいだからいいだろうと借り出し。

もちろん、前に読んでいたものだった。副題は「宇宙への旅立ち」。ペーネミュンデからアメリカへ渡った科学者たちと宇宙開発の話。ミッチェナー本らしく、いかにも登場人物が類型的なのが難だが、しかしそれなりには面白い。特にフォン・ブラウンという人物の理想と、実際に果たした役割を知ることができたのは貴重。リンドン・ジョンソンが実は(意外なことに) 強力な宇宙開発族議員であり、米国の宇宙への旅は彼に負う部分が多かったことがわかる。

しかし、半分ほど読んで、飽きた。けっこう後半はダレます。ミッチェナーの特徴であるる長大さが、この本ではちょっと裏目に出ているような印象。(それでも前回は読み通しましたが)


新潮文庫 ★★★


ram.jpg2年ぶりの再読。相変わらず面白かった。

レクター博士という怪物を創造したことも凄いけど、クラリス捜査官(まだ研修生か)というキャラクターもいいです。貧しさから必死にはい上がろうとしている、意欲あふれる聡明な女性。疲れ切った定年間際のベテラン捜査官。気のきいた友人。スミソニアンのへんてこりんな研究者。豊満な乳房を持ちたかった、裁縫上手な大男。

さすがに2回目となると、あちこちのアラも見えてくる。書のテーマとなっている「羊」の沈黙とは何を指すのか。レクターはボールペンの先端部分を具体的にどう細工して脱獄に成功したのか。なんとなくわかったようで、実は理解していない。

原文を知らないから無責任な言い方だが、訳が悪いんじゃないのかなー。やけにクセのある訳で、それが雰囲気を作っているともいえるけど、分かりにくい。テニオハの使い方も、あちこちで引っかかる。

とういうようなイロイロはあるけど、でも楽しめました。次の「ハンニバル」は、ちょっと仕掛けがおどろおどろし過ぎる嫌いがあり、ちょっと躊躇。


講談社 ★


anatao.jpg妻が面白がっていた本。ちょっと早起きした朝、一読した。

日米のシステム会社によるプレゼンに立ち会ったことがあったそうだ。米国の会社のプレゼンはもちろん堂々と、いかに素晴らしいシステムであるかをアピール。ところが日本チームの発表はなんとも貧相で、下をむいてボソボソという例のパターン。立ち会った客たちの反応は当然のことながら日本チームに対して厳しかった。こりゃよほど自信のないシステムなんだろう。

しかし、実際には日本チームの提案内容は素晴らしいものだったのだそうだ。それなのに、なぜあんな自信のなさそうな、下手な話し方をするんだ!  というより、そもそも聴衆に対する話し方を知らない!

本の内容は感情の出し方、声の出し方、姿勢の作り方などなど。けっこう具体的で面白い。たとえば声の大きさをあなたは何種類持っているか? 声の高さは?  一対一のとき、多数を相手の時、それぞれ声の出し方は違わなくてはいけない。そこを一本調子でやると、誰も聞いてくれない。好意を持ってもらえない。あるいは「うるさい野郎だ」と嫌われる。

ま、顔にお化粧をするように、服装に気を使うように、声や体の動かし方にも気を使うべきなんでしょうね。なんでしょうね、と納得して、みんなすぐ忘れてしまうんだけど。


新潮社 ★★★


ogainosaka.jpgなーんにも知らないもんで、森まゆみという人は鴎外の孫かなんかかと思ってしまった。どうやら関係ないみたいですね。

坂の家というキーワードで描いた鴎外記。なかなか面白かったです。鴎外について自分が何も知らなかったことがわかった。いつだったか嵐山光三郎の文人悪食で読んで、ご飯にアンコをかけて食べていたとか、家人に対しては公正で温和な人だったとか、ケンカ鴎外とはまた違う像を知ったのですが、今回はより総括的に知ることができました。ま、天才であり、バランスのとれた社会人であり、コチコチの明治人であり、といって完全無欠な石部金吉でもなく、適度な弱さもあり・・・・。

意外だったのは医学部を7番だったか8番だったかで卒業したということ。てっきり文句なく一番卒業かと思っていた。で、順位が低かったのですぐには留学させてもらえず、しばらく千住に開業していた父を手伝っていたということ。これだけではなく、鴎外という人、完全な出世王道の真ん中に乗っていたわけではなく、王道は王道でも絨毯のちょっと端を歩いていたような印象が残ります。後年のカッケ論争にしても、そうですね。なんでもできた大巨人のように見えるんだけど、でもかすかにキズがある。

本筋とは違いますが、鴎外の妹の喜美子という人の文章がよかった。明治の人の品のいい文章とはこういうものか、という感じ。小金井喜美子。小金井良精の夫人です。名前を知ってる程度で何も読んだことはなかったので、こんど探してみよう。兄弟姉妹は仲がよくて、喜美子が風邪で寝込んでいたら林太郎お兄様が湿した筆で唇に水を塗ってくれている。何してるの?と聞いたら、いや、高熱のあとは唇が乾いて切れることがあるから・・。

感動ものでもあるし、ちょっと怪しい印象も残るし。そういえば夏目漱石も奥さんの襦袢かなんかを着て鏡を見ていたことがあったらしいですね。紅も付けたっていうんだったかな。謹厳な明治人の、意外な側面とでもいうか。


草思社 ★★


isuramu2000.jpgイスラムに関してのまともな本を読んでみたかったという次第です。

単なる歴史書というだけでなく、産業構造やら貿易、税制、官制などなど、多角的に解説された包括的イスラム圏史です。難解な部分もけっこうありますが、それでもこの種の本としては読みやすいほうでしょうね。

それなりに面白かったものの、2000年のイスラム史をこんな本一冊だけで知ろうというのが甘い。あくまで一種の手引き書(にしては、とっつきにくいけど)として考えるべきでしょうね。

コーランの教えでは「偶像や人物画はいかんぞ」ということになってるらしいです。だからモスクはひたすら幾何学模様。しかし、現実にはけっこう絵画も残っています(宮廷を描いたものやスルタンの肖像画など)。この矛盾は、どう考えるべきか? 答えはもちろん、そんなに厳格には守られていなかったということなんですね。いくら宗教で禁止されていたって、洋の東西を問わず、王様や貴族は自分の肖像を書かせるのが大好きなんです。


文芸春秋 ★


ashitano.jpg鉄腕アトム伝説を一本の縦糸にした近未来小説です。近未来というより、ほとんど現代小説ですね。

鉄腕アトムと共に育った世代がアジモやアイボを経て、やがては「心」さえ感じ取れる完全自律型の「ロボット族」が誕生。人間が消滅してからも彼らの間には郷愁のアトム伝説なるものが言い伝えられていた・・・。

瀬名秀明という人、最初のうちは舞台の設定もいいしリアルな部分もあるし、詩情もあるしで、つい引き込まれてしまうのですが、どうも中盤以降がいけない。身も蓋もない言い方をすると「で、何が言いたいの?」ということになる。

今回もロボット研究者たちの悩み、東南アジアの地雷除去ロボットの挿話なんかのころは違和感もそうなかったのに、テヅカ記念館あたりからおかしくなる。なんか、ストーリーが接ぎ木されているようで、繋がらない。私にとっては、評価できない一冊でした。でも、新刊みたら、また手にとるんだろうな。、

中公文庫 ★★★


shinonihon.jpg2回目の挑戦。またしても破れてしまった。

面白いんだけどなー。村松剛の硬質な文章も好きだし、書かれている内容にも興味はあるんだけど、続かない。今回も最初の章の柿本人麻呂をフンフンと納得しながら読んで、で、最後の方で疲れてしまう。で、次の章は大伴家持かな。数ページ読んで飛ばして、急に平家物語かなんかにワープして、そのへんを暫く読んでいるうちに他に興味が移ってしまう。前回とまったく同じパターン。

何年かたったら、またトライしてみよう。今は読み通せないが、しかしトライする価値は十分ある一冊と思う。

あ、この本の内容は「時代によって変貌し、その時々の文学に残された死のイメージ」とでもいうようなものです。たとえば人麻呂の時代、死と水のイメージが深くつながっていたとか。故に、とかく言われている人麻呂水死説は必ずしも正しくはないのでは、とか。こうした死(および死後)の観念は平安末期、鎌倉期・・と変貌していくわけですね。当然のことながら、時々の宗教も深くかかわってきます。


文芸春秋 ★★


risounokokugo.jpgg斎藤孝というのは、例の「声に出して読みたい日本語」の著者です。

妻が借りてきたので、サラッと読みました。活字も大きく、サラッと読もうとすれば可能なボリュウムです。中身はよくあるパターンで、いろいろな名作の一部分を抽出、それをどう読むべきか・・とでもいうべき、国語読本、教科書読本のようなものですね。「小学3年生から、全世代がくり返し味わいたい「すごみ」のある名文」「最高レベルの日本語に出会おう」というわけです。

妻はここに掲載されていた中島敦の「名人伝(抄)」を始めて読んだらしく、面白がっていました。(これを読んだ子供たちも、あれだけ難漢字の多い文章なのにかなり興味を持つそうです)。で、肝心の解説の方は特に面白いとかユニークとかいうような印象はなく、かといって面白くないというほどのものでもなく、ま、そこそこ。でも抵抗なくスラスラ読ませるんだから、やっぱり斎藤孝という人、うまいんでしょう。

うーん、中島敦をまた読みたくなった。「李陵」や「山月記」なんかは時々あるけど、「悟浄歎異」あたりになると探すのが大変だなー。

追記
青空文庫で発見。エキスパンドブック版をダウンロードしてみたけど、けっこういいですね。読みやすい。


角川書店 ★★


yoruno.jpgナポレオンがエジプトへの野望を燃やし艦隊を走らせているころ、奴隷王朝の名残を残すこの地ではイスラムの蕃侯たちが策謀、美貌の家臣が暗躍、謎の書をめぐってあれこれあれこれ・・というようなストーリー。

なんだかわからないけど、結局「夜の種族」なるアラブの女語り部が延々と昔話をします。裏返し版のアラビアンナントとでもいうか、悪鬼と魔法と死とエロチズムの世界。へんてこりんな味のおとぎ話。

・・・という著者不明の奇書を世界初、日本語に翻訳しましたよ、という趣向です。


早川書房 ★★


nimai.jpg 「進化論と人文科学のはざまで」という副題付き。

グールドですから、ま、グールド味の本です。例によっていろいろ啓発される部分が多いのですが、今回面白かったのは生命発祥の道筋の話。簡単にいうと(1)環境の整っている惑星 →(2)何かの偶然で原始生命が生まれる →(3)高等生物に進化する・・という3段階のうち、ほとんどの人は(1)から(2)への段階が大飛躍だっと思い込んでいる。で、いったん(2)が実現すれば、あとは環境と時間さえあれば必然的に(3)へと進む、と勘違いしている。

火星運河説のローエルなども「火星には生命(植物)の兆候がある」「火星は地球より冷えが速かったから、高等生物も急速に誕生・発展したはず」と思い込んでしまい、このため火星に見える(ような気のする)線を運河と断定してしまった。

グールドによると(2)は案外簡単なのだそうです。ある程度の環境と時間さえあれば、確率的に(2)は実現する。しかし(2)のバクテリアが(3)の動物・人間になるという保証はない。少なくとも地球の場合は、この(2)から(3)への変化はたった一回しか起きなかった。つまり、地球上の生物はすべて同源。同じ仕組みのDNA、同じ種類の栄養システム(というべきかどうか)を使って生きているらしい。

なんせ、たった一回しか起きなかったんですから、これが簡単なのか難しいのかも、実は分からない、というのが真実のようです。故に、これを確かめるためにも、地球以外のケースが欲しい。分析できる量の火星のバクテリアがもし入手できるのなら喉から手のでるほど欲しい・・という結論に達するのですが。


理論社 ★★★★


kitanokuni.jpg厚さが5センチはあります。ずっしりと重い。なんせ初回から先日の「遺言」までの脚本を収録してあるんですから。発行は去年の夏あたりのようです。

倉本さんの脚本は読みやすいですね。情景がどんどん浮かんでくる。ひたすら時間はかかりますが、飽きません。

私、テレビの方はそんなに真面目に見ていなかったので、けっこう抜けや思い込みがあるのですが、それでも意外だったのは
・黒板五郎(田中邦衛)の別れた妻(石田あゆみ)が、テレビの印象とは違って生々しい血の通った「女」であるらしいこと。
・五郎の義理の妹(竹下景子)も、心が揺れ動く「女」であったこと。牧場のアンちゃん草太との関係も、必ずしも一方通行ではなく、実はけっこう可能性があったらしいこと。
・分校の先生(涼子)も、ただ能天気なだけでなく実は深い傷をかかえた女であったこと。

要するに、石田あゆみや竹下景子が演じた役は雰囲気がきれいすぎて、私のようないい加減な視聴者には彼女たちの「揺れ」や「痛み」「情感」が読み取れなかったということなんでしょうね。もう少し皮膚の厚い感じの女優さんが適役だったかも知れません。

過酷に厳しく、しかしリリックな富良野の自然を唄いあげているようでもあり、そこに暮らす人々は傷つけあい、騙しあい、かばいあい、笑い、ひたすら耐え抜いているようでもあり。単なる自然讃歌ではないし、かといって人間の貧しさ哀しさを読者の目の前に放り投げて、ただサラシモノにしているわけでもなし。だからこそ独特の読後感が残るのかもしれません。

「ライスカレー」の脚本のときも感じましたが、倉本さんというのは、やはり「上手な人」なんだと思います。非常に計算されていて、人間のドロドロを描いて、でももう少しで厭味になる寸前で止めている。それでも時々はやりすぎてる部分もあるようですけどね。

あっ、テレビの最後「遺言」のトド(唐十郎)の流氷帰還と乱痴気騒ぎは遊びすぎ。というより、さしもの倉本さんも唐との対決には力負けしてしまったのかな。「トド」の演技は倉本ドラマではなく、状況劇場みたいでした。

追記
結局のところ、テレビをかなりいい加減に見ていたんだなー。人間関係なんかも、記憶とはかなり違っていた。


河出書房新社 ★★


centenial.jpg太古から現代まで、ジェームズ・ミッチェナーの描くアメリカ西部史。確かテレビドラマにもなっていたはずです。

ミッチェナー本ですから、ま、堂々たるものですな。次から次へと主人公が移り変わり、時間は流れていく。センテニアルの場合は恐竜、馬、バッファロー、インディアン、白人、カウボーイ、農業、東洋からの移民たち・・・川の流れのように延々です。内容はミッチェナー本ですから(こればっかり!)安心保証付き。楽しめる。ドラマもある。読んで損はないでしょう。

確かミッチェナーにはハワイをテーマにした本もあったはずで、以前、一回読んだことがあった。なんとか再読しようと思っているのですが、手に入りません。一般的には通俗歴史小説という扱いなんでしょうか、案外、本が出回っていませんね。気に入った時に買っておけばいいようなものの、なんせミッチェナーですから超厚い、高い。というわけで、実際にはなかなか買えません。

このセンテニアルは多分、4回目くらいの通読です。全3巻。するする読めるけれど、なんせ量が多いからけっこう時間もかかります


中公文庫 ★★★


sameta.jpg木戸孝充伝、と言ってもいいのかな。長州の大立者 桂小五郎を中心とした幕末から明治初期です。文庫で全4巻なんだけど、例によってそのうちの2巻と3巻。内容としては蛤御門あたりから廃藩置県あたり。

木戸という人物、面白いですね。比較的(あくまで比較的ですが)人格にバランスがとれている。開明的。親分肌で部下の面倒をやたら見る。しかし決して粗野豪快ではなく、いじいじと内向的、女性的。すぐ拗ねる。

たしか第1巻だったと思うけど、木戸は当時としては大男だったと知って、これはびっくりした記憶があります。「力斎藤」とうたわれた斎藤弥九郎道場で塾頭をつとめたくらいで、五尺八寸くらいあったということです。これは、大きい。ちなみに坂本龍馬も大きかった。渋沢栄一は超小さかったけど、その渋沢が「伊藤博文は私と同じで小さかった」とも語っているとか。こっちの方はイメージが合います。

この幕末明治というのは、実にややこしいですね。というより、いつの時代だっていつの人間関係だって複雑に決まっている。明治になってからも伊藤、後藤、山県、黒田、海江田、ついでに旧藩の殿様やら国学者やらキリシタンやら。どいつもこいつも勝手な思惑で勝手なことをやりまくる。あいつとこいつが喧嘩して、こいつとあいつが罵り合って、で、木戸がうんざりして、拗ねて、隠遁して、日本各地で一揆がおこり、反乱が勃発して、仕方なくまた出ていく。

明治維新という事業、よくまがりなりにも成功したものです。奇跡ですね。まっとうに考えたら成功するはずのない条件だったのに、何故か成立してしまった。感慨にとらわれます。

村松剛の文章、やはりいいです。端正とでも言うべきでしょうか。端正すぎて、読むのに時間のかかる本ですが、好きです。


新潮社 ★★


kokugo2.jpgリビングに転がっていたので、ふと手にとってザッと読んでしまった。妻が借りてきたらしい。

著者は漱石研究者。で、一人息子の中学受験につきあい(というか、のめり込み)、当初は奥さんの出身である成城学園中学に入れようとしたのが、結果的に桐朋学園に合格させたという内容。

2部構成になっていて、前半は三田誠広の「パパは塾長さん」と同趣旨。後半は国語問題の分析、解答作成方法など実地のお話。妻はこっちの方に関心があって借りたらしいが、私はほとんど読み飛ばしてしまいました。

ま、真面目(でしょうな、多分)な大学の先生の書いたものですから、三田誠広ほどは面白くない。あれほどは笑えない。でも考え方や悩み、試行錯誤のあれこれなどは、まったく同じです。内容に釣られて、速読とはいえ前半部分すべてを読んでしまったんですから、やはりいい本なんでしょう。

何を隠そう、十年ほど前には私自身もこれと同じような生活でした。たまたま家の前に中学校があったばっかりに嫌気がさし(ひどかった)、なんとなく中学受験を考え始め、4年の暮れにひょいと入室テストを受けさせ、3学期からは新横浜に出来たばかりの四谷大塚に娘を通わせました。

四谷大塚というのは本来なら準拠塾(予習塾)に通うのが本筋です。しかし私たちは自宅学習(自宅予習)を選択。毎週日曜だけ新横浜で「日曜テスト」を受けさせました。多くはないものの、同じようなスタイルの家庭も珍しくはなかったようです。

大変でした。最初のうちは妻と私で分担して予習させましたが、すぐ算数が手に負えなくなりました。受験算数は非常に難しいです。理系の大学生でも解けるのは3分の1くらいじゃないかと思うくらいです。理科も物理関係がどんどん難関になりました。6年になってからは、ほとんど手も足も出ません。でも、それでも子供は私たちに聞いてきます。

私たちに出来るのは、せいぜい聞き役でしたね。子供はイライラしながら解けない問題を説明してくれるのですが、説明しているうちに整理ができるらしく「あ、わかった。もういい」というパターンの連続でした。

いろいろ大変でした。子供はもっともっと大変だったと思います。学校選びも苦心しました。結果的には第一志望のF女に合格。小高い山の上の校庭での合格発表、着膨れてぴょんびょん飛び上がって喜んでいた子供の姿が忘れられません。合格を確認するとすぐ抑え(の抑え)校への入学金振込で待機していた妻に電話。数日たってから当時新設だったKF(こっちが抑えの本命)からも合格通知が来ました。

入学式で生徒たちが歌う賛美歌にも涙が出そうでした。6年間お世話になりましたが、F女は本当に素晴らしい学校でした。

思い出したら、ちょっと涙腺が刺激されてしまった。

大学入試? 大学は子供本人の責任。完全に放置です。本人は遠い昔の中学受験などではなく、こっちの方が切実だったとは思いますが。


その気になってしまって、大昔に記録した中学受験メモを掲載してしまいました。


実業之日本社 ★★


itsunohi.jpg新選組伍長・島田魁を描いた小説。島田という隊士、これを読むまで知らなかったが、それなりにファンも持っているらしい。もちろん沖田とか土方には及ばないようだけど。

で、相撲取りと見紛うような巨躯と槍刀の腕前、誠実さ(あるいは小回りの効かない体質)を持った男が時代に翻弄されながら生き続けた後半生・・とでもいうことになるのかな。それなりには面白かった。

作者の中村彰彦という人、もしかしたらと気がついて調べたら、やっぱり「名君の碑」の書き手だった。こっちは秀忠の庶子・保科正之が主人公。確かそんなに悪くはないのに、読んでいるうちにだんだん不満が嵩じた記憶がある。何故だろう・・と考えたが、主人公が人間くさくないからかな。誠実過ぎる。あるいは、きれいごと過ぎる。嘘っぽい。

島田魁という人、近藤勇とは何度もケンカしている永倉新八の仲間で五稜郭まで従軍。御一新の後も改名・変名をせず、本名のままで一生を終えた。島田魁日記を書いた。土方の戒名と隊旗を大事にしていた。晩年、大官となっていた榎本武揚からの「会って話でもしたいから来い」との誘いを、にべもなく断った。

けっこう惹かれるキャラクターなんだけど、この島田魁は最後まで付き合った土方にはどういう思いを抱いていたんだろう。好きだったのか、嫌いだったのか、嫌いだけど好きだったのか・・・。その辺が小説ではスッキリしないのが残念。

いろいろ不満は残ったが、読み終えてから黒鉄ヒロシの「新選組」(PHP文庫)まで引っ張り出して再読してしまったんだから、ま、いい本だったのでしょう。

話は違うけど、私の使っているFEPでは変換しても新組しか出てこない。こだわってるのかな。


毎日新聞社 ★★


oieno.jpg岳宏一郎の未読書を発見すると必ず読むことにしているのだが、なんせ数が少なく、めったに発見することはない。だいだい、この人の魅力のすべては「群雲、関ヶ原へ」(新潮文庫)に集約されてしまった感がある。

御家の狗(おいえのいぬ)は江戸初期の怪物3人、つまり大久保長安、本多正信、本多正純のスケッチ集のようなものです。この3人が果たして真に忠義の士であったか謀反人であったかは永遠の謎でしょうが、岳宏一郎は少なくとも読者が反射的に連想する「狡兎死して走狗煮らる」を、もちろん計算してタイトルを付けています。越王勾践の軍師范蠡の故事でげすな。

家康の駿府時代というのは、どうもモヤモヤしています。大実力者・大久保長安という男が何故処分されなければならなかったのか(ただし長安本人は処分を免れてサッサと大往生。親類縁者や関係大名が巻き添えをくらった)。伊達政宗、家康六男の松平忠輝なども絡むし、おまけにキッカケとなった岡本大八事件というのも、どうもわかりません。(更に大八事件はキリシタン禁圧にも影響したらしい)

ま、形の上では正信の子であり、駿府派の権臣(当然、反秀忠派)本多正純の家臣が有馬晴信から収賄を行い、これで正純の影響力が一気に衰える。ここにまた福島正則の改築届け事件(正純に改築届けを出したのに、幕閣には通っていなかった)も絡んだり、非常にややこしい。

多分、岳宏一郎が断じるように徳川の重臣たちの苛烈な権力争いと考えるのが正解なんでしょうね。

子供の頃は「宇都宮の釣り天井」なんて、思うだにおどろおどろしくて、興味しんしんだったのですが。真面目に考えれば、将軍を暗殺するのに、わざわざ釣り天井作る必要はないわな。経費もかかるし、あまり効果はなさそうだし、工事関係者など秘密も漏れやすいし。ただ、処分後の正純が秋田藩に預けられて、そこで死を迎えたことはこの本を読むまで知らなかった。


世界文学全集14 集英社 ★★


typee.jpg集英社の世界文学全集14「ポー&メルヴィル」に、この「タイピー ポリネシア生活瞥見 」が収められているのを知り、迷いながら借り出し。他に文庫があるかどうかも不明の、めったにお目にかかれないマイナー本だ。

以前に読んだのは遥か昔、多分高校時代だったような気がする。とにかく捕鯨船の乗組員が南海の小島に逃亡し、蛮人に喰われそうになりながらまた文明社会へ脱出するというのが粗筋で、そんな筋よりも初めて読んだポリネシアの別次元のような激しい色彩だけが印象に残っている。ポイポーイ。タブー。タパ布、花束を黒い髪に飾ったオリーブ色の少女たちetc..。

あらためて読み直してみると、やはり大作家メルヴィルの、ごく若い時代の一習作だなーという印象。この中編(だろうな)がなかなか全集にも収められず、文庫や単行本も手に入らないのも納得できる。

主人公トンモ(トム)の行動や心理にはまったく共感を覚えないし、描かれた蛮人たちやその生活・文化(マルケサス諸島が舞台)も浅い。

たいして面白くはなかったが、でも再読できてよかった。再読しなかったら、少年時代からの妙な記憶の断片だけが残り続けて、「あれは知られてないけど、名作だよ!」などと言いかねなかったから。

そうそう。読んでると時々極彩色の1ページ大の挿絵があるのが困った。なんせ上半身裸のポリネシアン少女が花かなんかを持って何かしてるような絵だから。恥ずかしくて電車の中では開きにくかった。こういう点は、集英社の全集は好かん


kaga.jpg前田利家が死んでからの前田三代物語。利長・利政兄弟、そして利常エトセトラ。

津本陽の本、つい手にしてしまう。手にしてしまって、読み進むと必ず後悔する。完全に読み終え、面白かったなーと思った記憶がない。何故なんだろう。デビュー作の「深重の海」以外、まともな作品は皆無(もちろん私個人にとっての話)の印象がある。

資料はけっこう引用してくれるし、ゴツゴツした方言も味があるし、題材も悪くない。悪くないからつい読み始めてしまうんだけど。今回も、いったいこの人は何を言いたいんだろう・・という根本的な疑問が沸いてくる。要するに人間の描き方が浅いのかなー。で、今回も3分の1くらい飛ばし読みして放棄。


新潮社 ★★★


rome11.jpg副題は「終わりの始まり」。生真面目なマルクス・アウレリウス帝とその不出来な後継者コモドウスのお話。コモドウス暗殺の混乱から、正統性なき実力派(?)皇帝たちの覇権時代が始まる。

だいぶ以前に書いたモッタネッリの通俗ローマ史で「毎朝トレーニング代わりにライオンを一頭殺さないと体調が悪かったマッチョ皇帝」とバカにされていたのが、多分このコモドウスだろうな。ライオン代が大変だっただろうと真面目に心配して損をした。それとも塩野さんが書かなかっただけで、本当は毎日ライオンとレスリングしてたんだろうか。

アウレリウスという人物、哲人皇帝といわれていたことだけは知っていたが、詳細は本書でようやく理解。ま、当然でしょうな。たいしたエピソードもなし、面白みもないし、もちろん著書を私が読むわけもない。「瞑想録」だったかな。読んだ人なんて、いる?

ローマの混乱は、実は評判のいいアウレリウス時代に萌芽があった、という塩野さんの説は納得。ついでに言うなら、評判の悪いコモドウスの時代、良い事もしなかった代わり特に悪いこともしなかったため、実はローマは長期の平和を享受していたというのも納得。ただ単にレスリングと格闘という個人の趣味に忠実であった愛すべき人物だったらしい。

塩野さんがやたらと映画グラディエータ―のことを書いているのが少しおかしい。わざわざビデオ買ったというから、時代考証デタラメな娯楽大作にイライラしながら、けっこう何回も何回も見たんだろうな。

追記:
モンタネッリの「ローマの歴史(藤沢道郎訳・中央公論社)」における、コモドウスが休戦してローマ帰還のくだり、およびカラカラの性格のくだりを引用しときます。私の記憶ではごっちゃになっていた。

「コンモドウスは臆病ではなかったが、競技場での争闘だけを好んでいたのだ。毎朝、飯の前に飼っている虎を一頭殺すのが習慣だったのに、ゲルマニアには虎が棲息しないので、早くローマに帰りたかったのだ」

「カラカラは暗愚ではなかった。ただモラルが全然なかっただけである。毎朝起き抜けに熊と格闘して筋骨を鍛え、食卓には客の代わりに虎を座らせ、眠る時はライオンの脚の間だった」


早川書房 ★★


faery.jpgキャンベル賞、アーサー.C.クラーク賞受賞。奇妙な後味を残す近未来SF。

要するに地球環境がめちゃくちゃになってしまった21世紀。ナノテクと遺伝子操作、ネットが爆発的に発展し、ありとあらゆる疫病がはびこり、難民が押し寄せ、ドラッグが蔓延する時代。ロンドン、パリ、アルバニアを舞台にデブのハッカー詩人(道化師かな)と邪悪(?)な天才お姫様、凶悪クローンフェアリーたちが織りなす幻想的かつ汚濁の暴力世界。

こう書くと、何がなんだかわからないなー。わからないSFです。作者はフェアリーランド(ディズニーランドみたいなもんだな)に思い入れがあるらしく、そのへんが不思議な雰囲気になっているみたい。

あるようなないようなストーリーを追うのは、さして意味がないでしょうね。イメージだけ味わうのが正しいかも知れない。

悪くない一冊でした。


信濃毎日新聞社 ★


tsuji.jpg軽井沢とフランスを愛した辻邦生が、長野の新聞に連載したもの。没後、夫人の意志で刊行された経緯らしい。

新聞の長期連載コラムだから、ま、悪くはないが、かといっても感動するようなものでもない。いかにも辻さんらしい書き方で続いていく。

辻邦生の本、「背教者ユリアヌス」は非常に好きだったけど、それ以外はちょっと高尚すぎてダメだった。「西行花伝」など、ときどき読もうと試みては挫折の繰り返し。私のような俗人には香りが高すぎるのかな。


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