Book.03_1の最近の記事

文藝春秋 ★★


sakaiya-hide.jpgま、よくも悪しくも堺屋太一の太閤記です。

それなりに3巻を読了はしましたが、さして感銘もなし。といって後悔するほどでもなし。

若い頃の浮浪仲間「がんまく」という男。同じような環境から生長した二人が、ひとりは太閤になり、ひとりは世直し運動家の石川五右衛門になるというのが新しい解釈ですが、でもねー。

「夢を越える」というのは、先達だった信長を追い越してしまったという意味です。信長が目標だったうちは簡単でよかったけど、信長の夢を越えてしまったところで指針がなくなる。あとは迷える男・秀吉の混迷というわけです。


至誠堂 ★★


james.jpgせっかく3巻4巻を読んだので、ついでに巻1巻2も読み直してみました。

この前に読んだのは1年前だったか、2年前だったか。その頃は感情移入できなかった沼地の一族(ターロック一家だったかな)が、妙に面白いです。先天的な放浪者の家系、こすっからい盗人、文盲。その一族から初めて文字を読み書きできる少年が育ち、奴隷船の船長となる。あるときは奴隷船で金稼ぎ、あるときは愛国的な私略船の船長。そしてあるときはロマンチックで酷薄な色男。

それにしてもミッチェナー、年齢のせいか力量が落ちてますね。アネクドート展開の混乱がけっこう目立ちました。


小学館 ★★


morimura-h.jpg巻1の副題は「新星 平清盛」巻2が「驕れる平氏」。清盛の誕生から保元・平治の乱、一門の躍進、小松殿(重盛)の死あたりまでです。

ちょっと真面目になりますが、このテの本を読むといつも思うのが「権力」というヌエの正体。たとえば院政。天皇ではなく上皇がなぜ実権を持つことができたのか、あるいは上皇・法皇(この場合は後白河)の権力を奪って天皇が実権を回復するとは、具体的にどういうことなのか。人間同士の、単なる性格的な力関係なのか、たとえば味方となった公家たちの数や財力なども多少は影響しているのか。

例えば摂関を独占していた藤原の主流にとって、実権が天皇から上皇に移るというのは致命的なことです。あくまで摂政関白とは、天皇制に依存しているわけですから。天皇(つまりは摂関)を無視して、どこかの院で政治を行われてはたまらない。でも、そうなってしまった。

ついでに言えば「政治を行う」とは、天皇なり上皇なり命令を下すということです。天皇なら詔勅とか宣旨。院庁なら院宣かな。あくまでシステム上は「天皇の代理である上皇・法皇の命令」という形だったはずです。で、上皇や法王に権威があって天皇側が弱体なら問題ないけど、たまたま意欲的な天皇が登場すると話がややこしい。それがまぁ保元の乱ということになるんでしょうね。

時代は違うけど、秀吉が蒲生氏郷の死後、会津ン十万石を改易しようとした際も、実権を持たないはずの関白秀次が秀吉の命令書に印を押さなかったという事件があった。ま、いろいろ事情はあったんでしょうが、たとえ実権がなくてもシステム的には関白のハンコがないと実効性を持たなかったわけです。もちろん、太閤に逆らった代償は破滅でしかありませんでしたが。

そうそう、この平家物語。ま、いかにも森村調の歴史モノです。好きな人もいるんでしょうけど。


至誠堂 ★★


james.jpgg去年だったか巻1~2を読んだ。しかし何故か図書館には巻3~4がなく、それっきりだったのだが、先週またフラリと出掛けたら新着図書の棚に2冊並んでいた。もちろん即効ゲット。まだ一人か二人しか読んでいない雰囲気で、新しい。

内容は例によってのミッチェナーふう展開で、アメリカはチェサピーク湾を主題とした数百年の物語。チェサピークって、さすがに名前は知っていたが、たぶんワシントンとかニューヨークとかあっちの方だろう程度のおぼろげなもの。ようやく勉強できました。

ボルティモアとかフィアデルフィア、アナポリスとかサスケノハナ川とか、こういう位置関係だったんだ。おまけにペンシルバニア、メリーランド、バージニアなんかの配置も初めて詳細に知ることが出来た。なるほどねー。なんとくノッペリした海岸にこうした州が南北にズラーッと並んでいるような印象だったが、まったく違って複雑に入り組んでいる。

で、チェサピーク湾。調べてみたら平均の水深が7メートル。広さは瀬戸内海の5分の3強。浅くて、でかいです。湾の中央には旧サスケノハナ川の跡が残っているため、ここだけは水深があり、喫水の深い船でも通れるようです。

主な登場人物(というか家系)は農園主、造船業のクェーカー教徒、這い上がろうとする黒人。それにプラスして湿地帯にはびこっている貧乏白人たちがいて、これが魅力的。無学、偏見、頑固、狡賢い、強靱という家系(パタモーク一家?)で、好きなのは黒人いじめと雁猟。どうしようもない、典型的なアメリカの困ったプアーホワイト。しかも素晴らしい享楽的な連中。味があります。


筑摩書房 ★★


oooka.jpg大岡さんの本では「レイテ戦記」が好きで、ただ好きといってもなんせあの大部かつ詳細なものなので、通して読んだのは二回程度か。今回は未読の「将門記」を読もうと思って、わざわざ全集の1巻を借り出した。

収穫は、当時の坂東の地形を知ったこと。特に利根川、鬼怒川あたりの流れが現在とはまったく違っていたらしい(特に家康の時代でガラリと変貌した)。開墾しにくい湿地の領主であった将門と、既にひらけていた土地を支配していた伯父叔父たちとの確執。新旧の対立というふうにも考えられるとのこと。なるほどねー。

「将門記」は比較的短いのでサラッと読み終えたが、その後で大部の「天誅組」に取りかかろうと思いながら、こっちは挫折した。ま、また読む機会もあるでしょう。

こういう全集、全巻揃えておきたいなー。置く場所もないけど。


文藝春秋 ★★★★

saru.jpg 多分妻が読みかけだったらしく、机の上に置いてあったのでサラッと通読。

サル学はニホンザルを持っていた日本が世界をリードした珍しい分野で、多くの日本の人がボスザルと離れザルの関係とか、芋洗い文化の伝播など、けっこう知識を持っている。これって、かなり特殊なことらしい。多くの西欧人の場合は、サルに文化なんてあってたまるか、というこだわりから簡単に抜けられないとのこと。

改めて確認したこと。
・ボスザルが群を支配・統率しているというのは神話にすぎない
・メスはけっこう自由で強い。特にハバザルは力を持つ
・群の構造や関係は、ニホンザル、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、マントヒヒ・・・すべて異なる。「サル一般」というような文化構造はない。

そういえば、ついこないだ、人間とチンパンジーはDNAから見ると非常に近縁であるという新聞記事を読んだ。人間をチンパンジーの亜種に入れるか、あるいはチンパンジーを人間の仲間に入れるか、どっちに分類し直したほうがいいかも・・という研究発表だった。

キリスト教社会からはものすごい反発がくるだろうなー。


小学館 ★★★


maison.jpgいろんな版が刊行されているらしいけど、多分、小学館コミックスの巻1~5。何故か5巻までしか買ってない。その続きがあるらしいことも長い間知らなかった。

で、寝る前に読み始めて、5巻をほぼ1週間でちょうど読了。読了という言葉を使うのもすこし変かな。読み返すのは何回目になるか覚えてないですが、相変わらず面白いです。サブキャラクターが全員生きている。ある程度以上の年配にとっても懐かしすぎる事物にあふれている。

今回読んで、これまで記憶違いをしていたことを発見しました。私、アケミちゃんの名前はてっきり「二宮アケミ」だと信じていた。当然、住んでいるのは2号室のはずです。それなのに何故五代の5号室から穴があけられるのか、不審に感じてはいたのですが・・。

彼女は六本木朱美、6号室というのが正解だったようです。じゃ、2号室には誰が入るのか。空き家になってるわけだけど。これもまた不思議なのでネットで調べてみたら、二階堂(五代のニキビ面の友人? ん?あれは坂本だっけ)が入る予定らしい。また私は未見だが八神いぶきという女も来ることになってるらしい。

それにしても3号室って、どこにあるんだろ。


光文社 ★★


sangoku.jpg前に同じ三好さんの興亡三国志(たしか文庫で全5巻)の2巻まで読んだ。通して読むつもりで1~3巻まとめて買ったのだが、なぜか第2巻がダブっていた。買いなおすのもナニで、ここで挫折。

オーソドックスな構成の三国志と違い、この外伝はオムニバス構成となっている。本編ではゴチャゴチャ登場して、あっさり消えてしまう名将・参謀・論客などなどを一人ずつ主人公として取り上げている。全部で16人かな。

従って、この外伝では劉備も曹操も関羽も前面には出てこない。彼らの下で一瞬の輝きを得たり、失意のうちに首を刎ねられたり、賢く立ち回ろうとして失敗したり、・・という人間臭さがなんともいい。だいたい劉備が死んでからのことなんて、普通の三国志じゃあまり語られていないもんね。

という具合で意外に面白くはあったが、でも三好さんが書いてもこんなものなのかなーという失望はある。かなり達者な作家でも、このテの歴史ものを題材にすると、なぜか平凡な小説になりがち。題材や登場人物があまりに強烈すぎるのかな。腐るほどあるマリー・アントワネットものなんかもそうですね。


原書房 ★★


bunkashi.jpgアーサー王伝説なんか読んだので、このへんにも興味を持ってしまった。ケルト人ってのはよく目にし、耳にする言葉でありながら、いまいち明快じゃない。要するに、よくは知らない。

なんだかんだと読んだ結果、理解できたのはガリア戦記なんかに登場する「ガリア人」やら「ゲルマン人」やら、すべてひっくるめて「ケルト人」と称しても間違いじゃないらしいということ。北西ヨーロッパで暮らしていた先住民族はみーんなケルト。人身御供をやったり、ドルイドがいたり。裸で戦ったり。

故にアーサー王ってのはブリテン島にいた先住のケルト系集団の王様(あるいは武将)。ケルト系ってのはどんどん圧迫されて、最後はウェールズ(たぶん)とかアイルランドにしか残らなくなってしまったらしい。

写真図版のいっぱい入った本だったけど、角付きの兜をかぶって縄帯一本、あとはスッポンポンで戦斧(多分。斧そのものは消失)を振りかざしている像、有名なものらしいが、実に躍動感がある。こういう野性的でおおらかで、ちょっとヌケた民族が、狡猾なローマに征服されてしまうってのは当然の成り行きなんだろうな。

ガリア征服の発端となったスイスあたりのガリアの一部族移動も、彼らとしては平和的な通り抜けのつもりだが、野心あふれる執政官(だったかな)カエザルにとっては絶好のチャンス。「ならずもの部族の移動だ!」てんで嫌がるのを無理やりやっつけて、それでカエサルの財布もふくらんだし、ローマ帝国も拡大できたし、西ヨーロッパも文化国家になれた。


原書房★★


rakujitsu.jpg副題は「真実のアーサー王の物語」

サトクリフという人、アーサー王あたりをよく書いている人らしい。ただこの「落日の剣」はファンタジーというより、一種の想像歴史小説のような雰囲気を持っている。

したがって白く輝く鎧も貴重な名剣も登場しない。最強の騎士軍団とか称しても、せいぜい数百騎程度。主人公もアーサーではなく、山賊の親分みたいな熊のアルトスだし、宮廷も質素でボロ屋。食い物もまずい。要するに西ローマ帝国が滅びたあと、海を越えて侵攻するサクソンや北の高地からのピクト反攻に苦しむ5~6世紀のブリテン島の実情を、かなり正確に描いたものらしい。

これまでなんとなく「アーサー王」ってのはサクソン人かと思っていた。ま、フィクションであるアーサー王の雰囲気は多分9世紀とか10世紀あたりからとってるんだろうから、それならサクソン人ふうであっても当然だわな。あ、史実としてのアーサー王のモデルはブリトン人(ケルト系)だそうです。

ちなみに時代がくだってノルマン王朝(プランタジネット)になってからの獅子心王リチャードの12世紀末が、スコット描く「アイバンホー」になるわけで、ここではもうサクソンが被征服民族になってしまっている。ロビン・フッドの活躍も一応この頃。子供のころに読んで、「ブタ」はサクソン語だけど「ブタ肉」はノルマン語、という説明が面白かった記憶がある。サクソンが育て、ノルマンは奪って食べるのね。

ま、けっこう、読める本でした。ただし血沸き肉踊るカタルシスはありません。神話的ではあるものの、ひたすらリアリスティック。悲惨で辛い内容です。


新潮日本文学 ★★★


shishi.jpg何かの拍子で獅子文六の「大番」が読みたくなった。ところが探してみて驚愕。獅子さんの本なんて皆無なのだ。どうやら版元にもほとんど在庫はないみたい。

ひどい時代だなー。獅子文六、石坂洋次郎、大仏次郎・・。こういう本はきれいサッパリ消えている。あの井上靖だってほぼ全滅。しろばんばシリーズと西域ものが少し残ってるくらいだ。

というわけで図書館で探したらようやく文学全集で獅子さんの本が発見できた。内容は「父の乳」と「娘と私」。読み返してみると、もちろん面白いです。とんとん読んでしまう。

今回の発見としては、再婚当時の獅子さんが「中落ち」とか「中だるみ」という一種の性欲減退症候群に陥っていたらしいこと。昔読んだ記憶ではたまたま獅子さん夫婦が寝室を別にしていたため、ついつい不精して奥さんを放置してしまったような印象だったのだが、そうではなかったらしい。なんせ確かめるためわざわざ女を買いに行ってみたが、やっぱりダメだったというのだから。

ただ、この奥さんが亡くなってから三回目の奥さんとの間には息子さんができたらしい。60歳での長男誕生。溺愛していたという。


扶桑社ミステリー★★★


longwalk.jpgリチャード・バックマン名義で書かれた、キング初期の作品。

ストーリーは単純です。近未来のアメリカ。貧しく全体主義的な社会のようです。そして爽やかな5月、選ばれた100人の少年たちが一斉に歩きだします。落伍すれば犬のように銃殺。99人を振り捨てて最後の一人になった少年だけが栄誉と巨額の賞金を獲得します。

雰囲気は「スタンド・バイ・ミー」にも少し似ていますね。ただし、少年たちのいかにも少年らしい会話とか、友情、憎悪、感情の衝突のすぐ背後には容赦ない死が待ち受けていることだけが違うけど。

それにしても気になるのはこのレースの制限速度。時速4マイルを下回ると警告です。警告は3回までで、4回目は銃殺。ただし警告なしで1時間歩き続けることができれば切符が一枚減るというルールです。

で、この4マイルという数字が私にはけっこうひっかかりました。時速に換算すると6.4キロで、かなり速い。確か旧日本軍の行軍速度は時速4キロだったと思います。これで1日8時間歩いて約30キロ。

時速4キロというのは、決して早足ではなく、決して遅くもなく、しかし着実に歩いているときの速度です。時速6.4キロだとかなり早足。スタスタと歩くという感覚でしょうか。何時間もこのペースを維持するのはかなり辛いです。ましてモノを食べたり、飲んだり、話をしたり、後ろ歩きしながら放尿したり、半分トロトロと眠ったりしながらでは至難。

時速5キロが「忘れ物に気づいて取りに帰る速さ」という表現もどこかで読んだ記憶があります。アメリカの少年たちは足が丈夫なのかなぁ。


集英社 ★★


dosukoi.jpg深夜、どすどすと異様な地響きが江戸八百八町にとどろきわたり・・・と始まって、最後もまた怪音で終了。全編これぶくぶく肥満のアンコ力士たちと呪いとこじつけがましい解明、破天荒ミステリーが相撲取りならぬ尻取りふうに連綿と続きます。キーワードは「肥満」

京極夏彦の本、読むのはこれが最初。最初というのは不幸な巡り合いだったかな。それとも他の本も同じようなものなんだろうか。

完全に遊びまくった連鎖短編集ではありますが、文章は達者なひとですね。あまりと言えばあんまりな・・と思いつつ、結局最後まで読んでしまいました。京極夏彦の他の本を見つけたら、はて読むかどうかは微妙。


世界文化社 ★★★


shingan.jpg小林秀雄なんて、教科書で読んだっきり。なま女房が深夜に鼓を打ってなんとか・・という代物でしたか。以来、手にとってみたこともない。いかにも偉そうで敬遠してました。

世界文化社の本ですから、写真がけっこう入っています。骨董とか絵とか書とか。小林秀雄が愛したという青磁やらなんやら、一見しただけではは少しも良さそうに見えないですね。やはり世界が違う。レベルが違う。

いろんなエッセイやら評論やらを収録していますが、中でも青山二郎との仲間うち対談は違った意味で面白かった。ほとんど意味不明。酔っぱらった友人同士がヘロヘロでしゃべっているような内容。でも当時の信者にとっては含蓄だらけの素晴らしい高踏対談だったんだろうなー。

ザーッと(それでも小林秀雄ですから、時間はかかる) 読んでみました。ザーッと読んではいけない本だということは理解できました。一行一行、テニオハの一つ一つに味がある。重いとでもいうか、じっくり舌の上で転がして味わわなくてはいけない文章ですね。濃厚な抹茶です。

「平家物語」の評を読んで、なんか平家をじっくり読みたくなりました。文庫で探して第一巻だけでも買ってみるかな。以前は荒唐無稽の太平記に興味があったけど、今度は平家。老後の楽しみになるかもしれない。


早川書房 ★★★★

7king.jpg「氷と炎の歌」と題したファンタジーシリーズの第一巻。「七王国の玉座」の原題はA GAME OF THRONES

表紙は女子高生むけみたいで超ひどいけど、中身はいいです。久しぶりに面白い本を読んだ充実感があります。ローカス賞受賞作。しかし、しかしそれにして装丁は内容と乖離して悲惨だなー。写真は上巻ですが、下巻に至っては乳房もあらわなな女王かなんかの絵で、これだけで潜在読者の7割くらいは逃がしてる。恥ずかしくて電車の中で読むにはかなり勇気がいります。最近の早川書房って何を考えてるんだろ。

舞台は中世のブリテン島を思わせる封建の世。ハドリアヌス防壁を連想させる巨大な氷の壁の北は異形人が彷徨しているし、海を隔てた荒野にはフン族みたいな弁髪の騎馬民族が荒し回っている。で、大狼や黒牡鹿、金獅子などを紋章とする誉れ高い大貴族たち及び一族が激しく争い、騙しあい、陰謀渦巻き、王位を狙う・・・。

登場人物はやたら多いです。最初のうちは誰と誰がどういう関係なのか、間違いなく混乱します。でも50ページくらい読んでるうちに、だんだん筋が見えてくる。

極悪非道の騎士、魅惑の悪騎士、愚かで頑固な騎士、知恵だけが武器の高貴な血筋の侏儒。子供たちもたくさん登場します。健気な王子、たくましい少女。愚かな美少女。素晴らしいのは、人間が決して類型的ではないということでしょうか。細部がよく書かれていて、魅力あるキャラクターが多く、感情移入しやすい。

ファンタジーというより極上質のSF、あるいは充実した歴史文学の雰囲気すらあると言えるかもしれません。そうそう、一言唱えれば火炎がほとぼしるような便宜主義魔法はほとんど出てきません。ただ皆無というわけではなく、最後の方でほんの少しだけなら、ありますが。

続編(巻2: A Clash of Kings、巻3: A Storm of Swords)を早く読んでみたいけど、どうせ刊行は時間がかかるんだろうなー。作者は全6巻の予定だそうです。

追記:
装丁は目黒詔子という人だった。こういうタイプの絵をかく人に依頼した早川書房が悪い。どういう読者層を想定してるんだろ。

追々記:
この本、どう形容したらいいのかなー。コニー・ウィリスの「ドームズディ・ブック」ほどは叙情的でなく、ダン・シモンズの「エンディミオン」シリーズよりは妙な偏愛がなく、ヒロイックでもなく、SFチックでなく、マイクル・クライトンの「タイムライン」よりは人物が描けていて真実味がある。そんな書にル・グィンの「ゲド戦記」の味をちょっと振りかけ、ウォルター・スコットの「アイバンホー」も混ぜこんだような・・・。説明しきれませんね。

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