早川書房★★★★
ちょっと前に読んだ「怪物たちの食卓」で取りあげられていた本。もちろん初読の作家です。
短編集ですね。「ピュア」は女たちが劇的進化して、やたら強い性になる。外敵と戦い、地球を周回する軌道上から世界を支配し、背中には装甲のような鱗をまとう。男を襲って精液を搾り取り、終わったら食い殺す。
子宮が「食え!」と命じるんですね。たぶん、地球が破滅に瀕し、人類の出生率がゼロになりかかったどっかの時代、そういう行為を始めた一部の女だけが妊娠に成功した。食うこと=人類の生存なんです。
というわけで軌道上の(女だけの)学校の教室、生徒たちは次の地上襲撃の話題で盛り上がったり。うん。妊娠して産んで上級女性になるんだあ。そう、男をつかまえて搾り取る。組み敷かれた男は「え、オレなの?」という顔をして、恍惚として放出して、食われる。
ま、そういうストーリーです。あっけらかんとして、悪くはないです。
ほかの短編は好きなクラスメイトが男になってしまう話。もうひとつの短編は男どころか異人種になってしまう話。ほかにもあったっけか。少女小説の雰囲気です。
で、いちばん最後の小編は冒頭「ピュア」の別版。食われる男の立場からみた世界ですね。これもすこし悲しい。全体、けっこう生煮え部分もありますが、ま、斬新、衝撃、新しい世界です。やはり★★★★でしょう。